ベック通算14作目となる『ハイパースペース』が新たにミックスを施したオリジナル音源+2曲の新曲+ペイズリー・パークでレコーディングした「Paisley Park Sessions」を加えた「Hyperspace Deluxe Edition」が日本独自企画として12月4日にリリースされました。
Hyperspace Deluxe Edition / BECK
”Raspberry Beret”、"When Doves Cry"、"Kiss"、”1999″のメドレーを歌ったラストの“The Paisley Experience"で、プリンスを知ったBECKファンもいるかもしてませんね。
今年のプリンス・カヴァー曲まとめ
(リリースは昨年ですが)BECKを始め今年も多くのアーティストがプリンスのカヴァーを披露されました。サイトで紹介したカヴァー曲関連の記事をまとめるとこんな感じ。
- 西寺郷太と井の頭レンジャーズによる7″シングル「Money Don’t Matter 2 Night / 恋人はワイン色」が2月19日リリース
- シーラ・E&アッシャー&FKAツイッグスによるプリンス・トリビュート他【第62回グラミー賞】
- Musiq Soulchildがプリンスやマイケルのカヴァーを収録した「THA SOUL BROTHA SERIES VOL 1」をリリース
- 『Tiny Desk Concert』にコールドプレイが出演、自身の曲に加えプリンスの”1999″も披露
- 1月に行われた『Let’s Go Crazy: The GRAMMY Salute to Prince』が米で4/21、日本では5/31に放送
- ビリー・ジョー(Green Day)がスザンナ・ホフス(The Bangles)と”Manic Monday”のカヴァーを公開
- ニッカ・コスタがプリンスの”Empty Room”のカヴァーをアップ
- キャンディス・スプリングスがfacebookでライブを配信、プリンスのカヴァーも披露
- ニール・フィンが自宅で演奏した”When Doves Cry”のカヴァーをアップ
- 【5/29まで】2020年2月15日にペイズリー・パークで行われたミシェル・ンデゲオチェロのライブがアップ
- 西寺郷太さんのソロ・アルバム「Funkvision」にプリンスやマイケルのカヴァーが収録
- ビリー・ジョー・アームストロングがカヴァー集「No Fun Mondays」をリリース。”Manic Monday”も収録
- ワークシャイがカヴァー集「LOVE SOUL」をリリース。収録曲にはプリンスの”Damn U”も
最大のイベントはなんといってもグラミーが企画したトリビュート・ライブでしょうが、今年は特にカヴァーが多かったと思います。
カヴァー10選
カヴァー曲は、オリジナル曲に対する最大級のリスペクトが根底にあるでしょうが、知られた曲を歌う事でファンの裾野を広げる目的も少なからずあると思います。
とは言え、カヴァー曲はオリジナルと比較されてしまう事もありリスクも高いでしょう。特に圧倒的な音域と表現力を兼ね備えたプリンスのカヴァーは一筋縄ではいかないでしょうけど、それ故にチャレンジしたくなるのかもしれませんね。
そこで今回はカヴァーしたアーティストの分岐点になったと思えるカヴァーを10曲をリリース年順に紹介します。
When You Were Mine / Cyndi Lauper ('83)
1983年の「She's So Unusual」に収録。オリジナルは’80年の「Dirty Mind」。
”Following him whenever he's with you”と原曲通り歌われたこの曲は、日本やカナダではシングルもリリースされました。
'85年にリリースされたシングル盤には「Purple Rain」効果を狙って”作詞・作曲:プリンス”としっかり記載!同年に行われたAmerican Music Awardでの芝居がかったパフォーマンスは圧巻でした。
I Feel For You / Chaka Khan ('84)
'84年にリリースされたソロ5作目のアルバム「I Feel For You」に収録。オリジナルは’79年の「Prince」。
ポインター・シスターズによる'82年のカヴァーも素晴らしかったですが、チャカはラッパーのグランドマスター・メリー・メルを客演に迎え、当時まだ目新しかったヒップ・ホップ風のサウンドにアレンジされた事もあり、全米チャート3位(R&Bチャート1位)と最大のヒット曲となりました。
シングル・リリースの一ヶ月前に公開された『Purple Rain』もヒットしていた事もあり、プリンス、チャカどちらにとってもWin-Winな楽曲だったと言えます。
KISS (feat. Tom Jones) / The Art Of Noise ('88)
'88年公開のキム・ベイシンガー&ダン・エイクロイド主演映画『My Stepmother Is an Alien (花嫁はエイリアン)』のサントラに収録、オリジナルは’86年の「Parade」。
トム・ジョーンズを迎え制作されたカヴァーは彼らにとってUKチャート5位と最大のヒットをマーク。同曲が収録された「The Best of the Art of Noise」もヒットしました。
Nothing Compares 2 U / Sinead O’Connor ('89)
'89年の2ndアルバム「I Do Not Want What I Haven’t Got (蒼い囁き)」に収録。オリジナルはザ・ファミリーに提供され’85年の「The Family」に収録、後にロージー・ゲインズを迎えたセルフ・カヴァーが「The Hits」、'18年に当時の音源がデジタル配信、’19年に「ORIGINALS」にも収録されました。
世界各国で1位を獲得、アルバムも初の全英米1位となったターニング・ポイント的なカヴァーなのですが、プライベートでは何かと揉め事が多くプリンスにもチョイチョイ噛み付いてきていました。
また、彼女のヒットのお陰(?)で多くのアーティストがカヴァーする際、オリジナルの”It’s been seven hours and thirteen days”ではなくシネイド版の”It’s been seven hours and fifteen days”と日数が変わったまま歌われるのも残念です。
If I Was Your Girlfriend / TLC ('94)
'94年の2ndアルバム「CrazySexyCool」に収録。オリジナルは’87年の「Sign O' The TImes」。
シングル・カットこそされませんでしたが、プリンス・フォロワーを公言していたこのカヴァーをキッカケにプリンスを知る若いファンも多かったと思われます。プリンスも3人を応援し’00年1月にマジソン・スクエア・ガーデンで行われたTLCのライブに飛び入り参加する程親交がありました。(レフト・アイのソロ作にはプリンスも関与する話もあったのですが帰らぬ人に...)
The Beautiful Ones / Mariah Carey ('97)
'97年の6thアルバム「Butterfly」に収録。オリジナルは’84年の「Purple Rain Mind」。
こちらもシングル・カットはされませんでしたが、Dru Hillのシスコ(Sisqó)を迎え二人のヴォーカルが美しく絡み合うオリジナルとはまた違ったセクシーなカヴァーに仕上がってます。
She’s Always In My Hair / D’Angelo ('98)
'98年のサントラ「Scream 2: Music From The Dimension Motion Picture」に収録。オリジナルは’85年のシングル「Raspberry Beret」のB面、後に「The Hits / The B-Side Collection」。
プリンスを敬愛するディアンジェロならではの渋い選曲で、グルーヴ感溢れるアレンジと圧巻のヴォーカルは当時話題になりました。
How Come U Don’t Call Me Anymore? / Alicia Keys ('01)
'01年のデビュー・アルバム「Songs in A Minor」に収録。オリジナルは’82年の「1999」のシングルB面、後に「The Hits / The B-Side Collection」。
3rdシングルとしてリリースされるもカヴァー曲だったからなのか全米59位と上位に食い込む事は出来ませんでしたが、卓越した歌唱力にプリンス・ファンにも好感が持たれた名カヴァーです。
3月にリリースされた自伝本『More Myself: A Journey』には、カヴァーを許可してもらうべくペイズリー・パークに訪れた話が掲載されています。
Beautiful One / Kandace Springs
オリジナルは’84年の「Purple Rain」。
マライアとダブった上、このカヴァーだけ公式リリースされて無いので悩みましたが、このカヴァーをYouTubeにアップした事がプリンスの目に止まり2014年7月にペイズリー・パーク・スタジオで開催されたライブに呼ばれたターニング・ポイントの曲。
プリンスから”A voice that could melt snow=雪をも溶かすほどの暖かな歌声”と称賛され華々しいデビューを飾ったのは多くのファンの知るところ。
Call My Name / Morgan James ('14)
'14年のスタジオ・デビュー・アルバム「Hunter (新装盤)」に収録。オリジナルは’04年の「Musicology」。
ライブ盤で既にデビューを果たしていた彼女はライブでも披露していた"Call My Name"をYouTubeにアップ。キャンディスと同じくプリンスの目に留まるも、手違いで上記デビュー盤への収録の許可が下りず収録出来ぬままリリース。その後プリンスから許可が下り”新装盤”に収録される事になりました。
プリンスのカヴァーは今後はもっと増える?
許可に関してはエステート側の思惑次第ですがプリンスの曲をより幅広い層に知ってもらう為にも下りやすくなるかも?
そして、これまでプリンスのカヴァーと言えば80年代から多く選ばれていましたが、世代もどんどん移り変わるので、前述の"Call My Name"の様に今後90年代以降からも選ばれる事が多くなるかもしれませんね。
個人的には、より多くの層にプリンスの良さを知ってもらう一つの手段としてカヴァーは今後も増えて欲しいな。(そしてプリンスの沼にズブズブと...😃)
カヴァー集のまとめ
下記のリンクにカヴァー曲を随時更新しています。