アルバム情報
Released:1993/8/31 | Label: NPG Records

Track List
- Goldnigga Pt. 1 (3:11)
- Guess Who's Knockin' (3:24)
- Oilcan (0:42)
- Segue (0:15)
- Deuce & A Quarter (3:18)
- Segue (0:21)
- Black M.F. In The House (5:08)
- Goldnigga Pt. 2 (2:51)
- Goldie's Parade (2:22)
- Segue (0:35)
- 2gether (5:31)
- Segue (0:45)
- Call The Law (4:16)
- Johnny (10:19)
- Segue (1:13)
- Goldnigga Pt. 3 (2:37)
"Guess Who's Knockin'"は1st editionのみ収録
Personnel
Produce,Arranged,Composed
- Prince (クレジットはThe New Power Generation)
Member
- Tonny M. (Lead Raps & Back Vocal)
- Levi Seacer,Jr. (Guitar & Back Vocal)
- Michael B. (Drums & Vox)
- Sonny T. (Bass & Lead Back Vox)
- Kirk Johnson (Back Vocal & Percussion)
- Damon Dickson (Back Vocal & Percussion)
- Tommy Barbarella(Piano, Purpleaxxe & Vox)
- Mr.Hayes [aka Morris Hayes] (Organ,Synths & Vox)
(Vocal & Guitar) (Non Credit)- Rosie Gaines (Co-Lead Back Vocal,Sampler & Organ)
Additional Musician
- Michael B. Nelson (horns)
- Kathy Jensen (horns)
- Dave Jensen (horns)
- Brian Gallagher (horns)
- Steve Strand (horns)
Sample
- "Get Up, Stand Up" by Bob Marley (1)
- "I Can't Stand It" by The Chambers Brothers (7)
アルバム・レビュー
ワーナー・ブラザースとの契約問題が表面化し、1993年4月にプリンス名義でのスタジオ・レコーディング休止を宣言。さらに同年6月7日の35歳の誕生日には、自身の名前を読めない記号(
)へと改名します。
ワーナーから離れた活動を模索し始めたプリンスは、アルバム『Diamonds And Pearls』でバック・バンドを務めたザ・ニュー・パワー・ジェネレーション(NPG)に、映画『Graffiti Bridge』でのジョージ・クリントン・バンドへの参加やカルメン・エレクトラのアルバムでソングライトにも加わった"Mr. Hayes"ことモーリス・ヘイズをキーボードに迎え、NPG単独名義による1stアルバムを制作しました。
本作は、ペイズリー・パーク・レコーズの閉鎖に先駆けて設立された新レーベル〈NPG Records〉からリリースされた記念すべき第1弾アルバムとなります。
リリースまでの流れ
アイデア自体は1992年初頭からプリンスの頭の中にあり、同年4月の〈Diamonds And Pearls Tour〉オーストラリア公演の合間にシドニーのスタジオ301で録音された3曲(「Goldnigga」「Deuce & A Quarter」「Goldie's Parade」)から制作がスタート。ツアー終了後に大半のトラックをペイズリー・パーク・スタジオで録音し、ストック曲の「Call The Law」「Johnny」、そして1993年5月の「2gether」を加えて完成させました。
日々のセッションから生まれたバンドのグルーヴに手応えを得たプリンス自らが独断で曲順を編纂したため、メンバーはアルバムの全体像を知らされないまま予期せぬリリースを迎えることとなりましたが、結果として当時のバンドの生々しい勢いが凝縮された作品となりました。
楽曲について
全体的なサウンドは、『Diamonds And Pearls』以上にホーン・セクションを前面にフィーチャーしたジャズ・ファンク/ヒップホップ路線となっており、トニー・Mのラップを主軸に据えています。各曲の合間に挿入された"Segue"も、アルバム全体の一体感を巧みに演出しています。
幕を開けるのは、ボブ・マーリーの「Get Up, Stand Up」のフレーズを大胆に引用した「Goldnigga Pt.1」。続く「Oilcan」ではリーヴァイ・シーサー・ジュニアによる小粋なギター・カッティングが光るタイトなインストを聴かせ、「Sexy M.F.」と「Housequake」を融合させたような濃厚なファンク・チューン「Black M.F. In The House」(チェンバース・ブラザーズの「I Can't Stand It」をサンプリング)ではプリンス自身もマイクを握りラップを披露しています。さらに、後に『1-800-NEW-FUNK』へ収録されるテイクよりも長尺なオリジナル・バージョンの「2gether」や、シングル「Money Don't Matter 2 Night」のB面を飾った「Call The Law」に至るまで、プリンス名義のアルバムとは一味異なる、猥雑で熱気に満ちたストリート・ファンクが凝縮されています。
プリンス本人の歌声を求めるリスナーにはラップ中心の構成に好みが分かれるかもしれませんが、D&P期のファンク・マナーをよりヒップホップへと推し進めた秀逸な作品です。
特異な販売形態と流通の開拓
本作は一般のレコード店を通じたメジャー流通を行わず、1993年8月31日の「Act II」パリ公演の物販ブースを皮切りに、ツアー会場やミネアポリスとロンドンにあった直営店〈The New Power Generation Store〉といった限られたルートのみで販売されました。さらに1997年に公式オンライン・ストア〈1-800-NEW-FUNK〉が開設されると、同サイトの通販ラインナップにも加えられています。
そのためチャートインの対象にはならず、CDジャケットや盤面にも一般的なレコード会社の配給記号や規格品番の表記は一切ありません。従来のレコード会社主導の流通システムに頼らずとも、ライブ会場での直販や直営店舗、そしてインターネット黎明期の通販サイトを通じてファンへ直接音楽を届けられるということを、プリンス自らの手で証明した先駆的な試みでした。
「Guess Who's Knockin'」と1stプレス盤について
最初にリリースされた1stプレス盤には「Guess Who's Knockin'」が収録されていましたが、2ndプレス以降では削除されています。
この曲は、トニー・Mがサビで歌うラップにポール・マッカートニー&ウィングスの「Let 'Em In」(アルバム『Wings At The Speed Of Sound』収録)のフレーズ"Someone knockin' at the door, Somebody ringin' the bell"をメロディごと色濃く借用していたためです。削除に至った正確な経緯(マッカートニー側からの指摘があったのか、あるいは『Lovesexy』収録の「Positivity」からキャットのラップを外した時のようにプリンス自ら配慮して取り下げたのか)は定かではありませんが、このトラックが収録された初期プレス盤は現在コレクターズ・アイテムとして高値で取引されています。
トニー・Mが語った幻の映画プロジェクト
2023年に行われたトニーのインタビューによると、アルバム制作当時、プリンスはこのアルバムを題材にしたショート・フィルムの制作を構想しており、監督にスパイク・リー、出演者としてトニー・M自身に加えて当時親交のあったラッパーの2パック(2Pac / Tupac Shakur)を起用する話し合いが進められていたとのことです。
トニーと2パックは頻繁に連絡を取り合っていたそうですが、その後2パックの法的なトラブル・収監等によりプロジェクトは白紙になったと語られています。脚本執筆や撮影には至らなかったものの、プリンスがヒップホップ・カルチャーのキーマンたちとどのような接点を持とうとしていたのか気になるところです。
Music Video