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ART OFFICIAL AGE / アート・オフィシャル・エイジ ('14)

アルバム情報

Released:2014/9/30 | Label: NPG Records, Warner Bros.

Listen on Apple Music

Track List

  1. Art Official Cage (3:41)
  2. Clouds (4:34)
  3. Breakdown (4:04)
  4. The Gold Standard (5:53)
  5. U Know (3:56)
  6. Breakfast Can Wait (3:54)
  7. This Could Be Us (5:11)
  8. What It Feels Like (3:53)
  9. Affirmation I & II (0:40)
  10. Way Back Home (3:05)
  11. Funknroll (4:07)
  12. Time (6:49)
  13. Affirmation III (3:27)

Personnel

Produce, Arranged, Composed

  • Prince & Joshua Welton

Written

  • Prince

Mixer

  • Chris James

String Arrangements

  • Adi Yeshaya

String Production

  • Michael B. Nelson

Additional Musician

  • Marissa Jack (aka. The Golden Hippie) (Background vocals) (1)
  • Lianne La Havas (Vocals) (2, 9, 10, 13)
  • Andy Allo (Background vocals) (3, 8)
  • Michael B. Nelson (Trombone)
  • Steve Strand (Trumpet) (4)
  • Dave Jensen (Trumpet) (4)
  • Kenni Holmen (Tenor sax) (4)
  • Kathy Jensen (Alto & Baritone sax) (4)
  • Delilah (Background vocals) (10, 13)
  • Hannah Ford (Drums) (11)
  • Ida Nielsen (Danish vocals) (1)
  • Ida Nielsen (Bass) (11)
  • Donna Grantis (Guitar) (11)
    and more...

Sampled

  • "Blinded" by Mila J (2012) (5)

アルバム・レビュー

アルバム・リリースまでの動き

前作『20Ten』(2010年)をリリースしたあと、プリンスは2010年10月から2012年5月にかけて、アメリカ、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリアを巡る大規模な〈WELCOME 2 AMERICA〉ツアーを敢行していました。その間、自身の新作アルバムはリリースせず、「Extraloveable」(2011年11月)や「Rock & Roll Love Affair」(2012年9月)、「Screwdriver」(2012年12月)といった単発の楽曲発表にとどめ、並行してアンディ・アローの『Superconductor』やラリー・グラハムの『Raise Up』などのプロデュース・ワークに精を出していました。

大きな転機が訪れたのは2013年に入ってからです。一時期はインターネットに強い拒否反応を示していたプリンスですが、突如として新バンド〈3RDEYEGIRL〉名義でTwitterやYouTubeを立ち上げ、SNSの世界へ本格的に参入しました。自らのサイト「3rdeyegirl.com」もオープンし、「Screwdriver」、「Screwdriver Remix」、「Breakfast Can Wait」、「RNR Remix」と新曲のダウンロード販売を開始。さらに8月には「PRINCE'S 1ST TWEET...TESTING 1,2...」という記念すべき初ツイートを投稿し、不定期ながらもファンと直接コミュニケーションを取るという、以前では考えられなかったフレンドリーな一面を見せ始めます。

精力的な活動を続ける中、コバルト・ミュージックから新作をリリースするという噂が立ち消えになるなど情報が錯綜していましたが、2014年4月18日、世界中のファンを驚かせるビッグニュースが飛び込んできました。なんと古巣であるワーナー・ブラザースと18年ぶりの電撃再契約を結んだのです。この契約の最大の決め手は、彼が長年戦い求めてきた「原盤権の返還」が含まれていたことでした。
この歴史的な再契約の発表から数時間後には、ワーナーから新曲「The Breakdown」(2014年4月18日)をサプライズ・リリース。その後もSNSを駆使して「This Could Be Us」の音源を無料公開するなど、巧みにファンの期待を煽っていきました。そして同年9月、過去作品のリマスターや『Purple Rain』30周年記念盤のリリースするといった嬉しい知らせ(実際にリリースされたのは2017年)と共に、彼自身の単独名義となる本作『ART OFFICIAL AGE』と、3RDEYEGIRL名義の『PLECTRUMELECTRUM』が2枚同時リリースされることになりました。

楽曲について

本作で最も注目すべきは、プロデュース、アレンジ、作曲のクレジットがプリンス単独ではなく「Prince & Joshua Welton」という共作名義になっている点でしょう。ジョシュア・ウェルトンは、3RDEYEGIRLのドラマーであるハンナ・フォードの夫で、当時はまだ若干24歳の若きクリエイターでした。これまでもリーヴァイ・シーサー・ジュニアやリッキー・ピーターソンといった長年の盟友たちと単発で共作することはありましたが、ここまで若い才能と対等の立場で、しかもアルバム全曲に渡ってタッグを組むというのは、プリンスにとって初の試みでした。2015年のジョシュアのインタビューによれば、実は本作の楽曲制作は『Plectrumelectrum』のレコーディングよりも前からスタートしており、3RDEYEGIRLのアルバム制作と並行しながら、じっくりと時間をかけてサウンドが固められていったそうです。

https://www.ebony.com/entertainment/is-producing-prince-impossible-ask-joshua-welton-interview-111/
https://www.ebony.com/entertainment/is-producing-prince-impossible-ask-joshua-welton-interview-111/

www.ebony.com

そんな若い血を取り入れた最新のEDMやデジタル・サウンドをベースにしながらも、脇を固める布陣は超強力です。ストリングス・プロダクションには90年代からプリンスを支え続けるお馴染みのマイケル・B・ネルソンを起用。さらにストリングス・アレンジには、2012年に惜しまれつつこの世を去った名匠クレア・フィッシャーの後を継ぐ形で、数々のクラシック作品も手掛けるアディ・イェシャハを迎え入れました。彼らによる重厚な生楽器の響きと、リアン・ラ・ハヴァスら魅力的な女性アーティストたちの歌声が見事に融合し、「時間は存在しない」という未来的なテーマと、パーソナルで親密な感情が交差する、深くもポップな世界観が完成しています。

Art Official Cage

ユーロビートからオペラ、ラップ、ダブステップ、そしてロックへと万華鏡のように展開する驚異のオープニング・トラックです。デンマーク語の口上から始まり、檻(Cage)からの解放を歌う社会的かつ宗教的なメッセージが込められています。今なお進化し続けるエネルギーが爆発する1曲です。

Clouds

リアン・ラ・ハヴァスの美しいボーカルをフィーチャーしたデジタル・ファンク。誰もが手軽にスターになれる現代のネット社会を風刺しつつ、未来の「時間を必要としない」時代を予見しています。その一方で、恋人と直接触れ合うことの温かさや大切さを歌い上げる、深いメッセージを持ったナンバーです。

Breakdown

「これから話すのは最も悲しい物語かもしれない」という切ない歌い出しで始まる、極めてパーソナルなバラード。大切な人への思いを綴るように進行し、曲が進むにつれて感情をむき出しにして高揚していくプリンスのボーカルに胸を打たれます。アルバムの核とも言える感動的な名曲です。

The Gold Standard

変調させたコミカルなボーカルと、軽快なギターのカッティングが心地よいファンク・チューン。ホーン・セクションが絡み合うグルーヴ感満点のサウンドは、まさに「ニュー・ミネアポリス・サウンド」と呼ぶにふさわしい仕上がりです。オープニング候補に挙がっていたというのも納得の完成度。

U Know

R&Bシンガーのミラ・Jの楽曲「Blinded」を大胆にサンプリングしたトラック。実はミラ・Jと彼女の妹は、幼い頃にプリンスの名曲「Diamonds & Pearls」のミュージック・ビデオに出演していました。時を経て自身のアルバムで彼女の声をフィーチャーするという、運命的な再会を感じさせます。

Breakfast Can Wait

朝食とセックスという、なんともプリンスらしいテーマを描いたエレクトロ・ファンク。夜のイメージが強い彼が朝のまどろみを歌い、中盤ではお馴染みのカミール・ボイスも飛び出します。デイヴ・シャペルがプリンスに扮したコメディ番組のワンシーンをアートワークに採用したことでも話題を呼びました。

This Could Be Us

SNSで流行していた「私たちもこうなれたのに」というカップルのミーム画像に、映画『パープル・レイン』でのバイク・シーンが使われているのを見たプリンスが、面白がってインスピレーションを得たというミディアム・スロー。彼の美しいファルセットがどこまでも心地よく響き渡ります。

What It Feels Like

アンディ・アローとの甘く心地よいデュエット・ソング。彼女のアルバム『Superconductor』を制作していた時期に録音されたセッションが元になっています。二人の絶妙な距離感とリラックスした空気感が伝わってくる、アルバムの中でも特にスイートでポップなナンバーです。

Affirmation I & II

リアン・ラ・ハヴァスによる落ち着いたナレーションで幕を開ける短いインタールード。「時間を必要としない」というアルバムのスピリチュアルなテーマを提示し、そのままシームレスに次の「Way Back Home」へと繋がっていく、見事な導入部としての役割を果たしています。

Way Back Home

「Breakdown」の伏線回収とも言える、幻想的でパーソナルな楽曲。鼓動のように鳴り響くビートをバックに、自らの過去や内面世界を深く見つめ直すような複雑な歌詞が歌われます。彼が探し求める帰り道というテーマが、聴く者の心を静かに揺さぶる美しいトラックです。

Funknroll

同時リリースされた『Plectrumelectrum』に収録されている楽曲の別バージョン。ここではジョシュア・ウェルトンによるエッジの効いたリミックスが施され、よりダンサブルでアグレッシブなエレクトロ・ファンクへと生まれ変わっています。アルバム後半のテンションを引き上げるキラー・チューンです。

Time

「What It Feels Like」と同じ時期に録音された、アンディ・アローとのロマンティックなデュエット・ナンバー。ゆったりとした心地よいグルーヴの中で、二人のボーカルが優しく絡み合います。アルバムの終盤にふさわしい、穏やかで温かい余韻を残してくれる素晴らしい1曲です。

Affirmation III

アルバムの最後を飾るのは、リアン・ラ・ハヴァスによる静かな語りと、壮大なストリングスが織りなす美しいアウトロ。これまでの旅路を優しく包み込み、深い悟りに至ったかのような穏やかな終焉を迎えます。まるで一本の映画を観終えたような、圧倒的なスケール感を感じさせてくれます。

セールスなど

同時発売という異例のリリース形態にも関わらず、本作は全米ビルボードのR&B/Hip HopチャートとR&Bチャートで堂々の1位を獲得しました。総合チャートでも5位にランクインする大ヒットを記録し、同日発売の『Plectrumelectrum』もロックチャートで1位を獲得するという偉業を成し遂げました。日本やヨーロッパ各国でもトップ10入りを果たし、世界中にプリンス健在を見せつけました。

リリース日にはペイズリー・パーク・スタジオでパーティーが開催され、Yahoo!を通じて全世界にライブ配信されました。ライブにはケンドリック・ラマーもゲスト出演し、若い世代をも巻き込む絶大なインパクトを与えました。 一方で、自身の音楽の権利を守るための戦いも続けており、違法アップロードを行うサイトに対して大規模な訴訟を起こす一幕もありました。「音楽を共有するのはクールだが、売るのが問題だ」と語るプリンスの姿勢は、多くの海賊盤に対する強い牽制となりました。

トリビア

デイヴ・シャペル起用のジャケット

「Breakfast Can Wait」のシングル・ジャケットには、人気コメディアンのデイヴ・シャペルが自身の番組のコントでプリンスに扮してパンケーキを持っている写真がそのまま使われました。

SNSのミームから生まれた名曲

「This Could Be Us」は、SNSで流行していたカップルの気まずいミーム画像に、映画『パープル・レイン』でのプリンスとアポロニアのバイクシーンが使われているのを発見したことがきっかけで誕生しました。

「The Cross」の引用

オープニング曲の「Art Official Cage」の歌詞「Ghettos to the left of me, malls to the right」は、名盤『Sign O' The Times』に収録された「The Cross」の一節をセルフオマージュしています。

運命のサンプリング

「U Know」で楽曲をサンプリングされたミラ・Jは、幼い頃に妹と一緒にプリンスの「Diamonds & Pearls」のミュージック・ビデオに出演していたという不思議な縁を持っています。

ファンへの巨額訴訟と、その真意

アルバム・リリース前の2014年1月、プリンスは自身のライブ映像などを無断でアップロードしたファン22名に対し、総額2,200万ドル(約22億円!)という桁違いの損害賠償請求訴訟を起こして世間をザワつかせました。しかしその後、問題のファイルがすべて削除されたため、あっさりと訴えを取り下げています。2007年の「ザ・パイレーツ・ベイ」への法的措置など、海賊版には昔から超がつくほど厳しかった彼ですが、「ファンが音源や映像を欲しがる気持ちはわかる。でも怪しい業者を通さず、公式から直接手に入れてほしい」というのが本音だったようです。ファンを訴えたかったわけではなく、あくまで「音楽の価値と権利を守るための威嚇射撃」だったという、いかにもプリンスらしいエピソードです。

Prince drops $22m pirate action against fans - BBC News
Prince drops $22m pirate action against fans - BBC News

www.bbc.com

Music Video

メインで踊ってる女性ダンサーは振り付けも担当したダニエル・レイ・クルーエル(Danielle Leigh Curiel)。当時18歳でしたがプリンスはMVの予算を全て彼女に渡し制作(監督)されてくれたと話していました。
エグゼクティブ・プロデューサーにはナヤ&マインディのザ・ツインズが担当しています。

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