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Timeless / タイムレス ('26)

タイムレス

Released: 2026/8/28 Label: The Prince Estate / NPG Records, Inc. under exclusive license to Legacy Recordings

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【Amazon.co.jp限定】Timeless (通常盤) - プリンス (メガジャケ付)

タワーレコード

CD:国内盤

アナログ:国内盤(黒)

Track List

  1. I Am You (4:44)
  2. Tick, Tick, Bang (3:13)
  3. Heaven (4:29)
  4. I Wonder (4:11)
  5. With This Tear (3:53)
  6. Stone (3:08) 1
  7. Calabama (3:31)
  8. The Guilty Ones (4:15)
  9. Bestest Friend (4:38)
  10. How Come You Don’t Call Me Anymore (Live) (5:54)

Personnel

Produce, Arranged, Composed

  • Prince
  • L. Londell McMillan, Charles F. Spicer Jr. (compilation producer)
  • Chris James (compilation producer, mixing and mastering)

Written

  • Prince
  • Prince, Sandra St. Victor, V. Jeffrey Simth and Jules Van Veen (6)

Musicians

  • Prince (all vocals and instruments)
  • Susannah Melvoin (additional vocal) (3)
  • Michael B. (drums) (5)
  • Sonny T. (bass) (5)
  • Kirk Johnson (percussion) (5) (drums and percussion programming) (6)
  • John Blackwell (drums) (7)
  • Greg Boyer (trombone) (7)
  • Cora Coleman-Dunham (drums) (8)
  • Josh Dunham (bass) (8)
  • Marva King (background vocals) (8)
  • Shelby J. (background vocals) (8)
  • Michael B. Nelson (trombone) (9)
  • Kathy Jensen (saxophone) (9)
  • Dave Jensen (trumpet) (9)
  • Kenni Holmen (saxophone) (9)
  • Steve Strand (trumpet) (9)

アルバム・レビュー

リリースに至る背景とエステートの動向

2023年にリリースされた『Diamonds And Pearls』スーパー・デラックス・エディションは、元々コメリカ管理下の旧体制下で『Diamonds & Love』として進められていた企画を、現体制が見直して規模を再編したものでした。さらに、長年にわたり懸案事項となっていたNetflixによるエズラ・エデルマン監督のドキュメンタリー映画を巡る契約問題も影を落としていました。同契約によるVault(保管庫)素材の独占条項が新たな音源リリースの制約となっていましたが、エステート側の異議申し立てを経て2025年2月6日に正式にお蔵入りが決定The Vault Has Been Freed.(保管庫は解放された)の宣言とともに、エステートは音源管理の自由を取り戻しました。

こうした法的な制約もあり、2024年と2025年はプリンスがこの世を去って以降、初めて「2年連続で未発表音源集がリリースされない年」となっていました(2025年11月に発売された『Around The World In A Day』40周年記念デラックス・エディションも、リマスターや既発B面曲等の収録にとどまり未発表音源は含まれていませんでした)。

その後、SNSでの『Parade』デラックス・エディションの発売予告などを経て、2026年6月4日の「Celebration 2026」にて正式発表されました。L・ロンデル・マクミランとチャールズ・スパイサー・ジュニアが実権を握る新体制となって以降、プリンス・エステートがゼロから企画・主導した初の未発表音源アルバムとなったのが本作です。

アルバムの全体像とアートワーク

本作は1977年の最初期セッションから2016年のラストツアーまで、約40年にわたるキャリアの全年代(70年代〜2010年代)から選りすぐられたスタジオ録音9曲とライヴ録音1曲を時系列順に配置したコンピレーションです。特定アルバムの拡張版ではなく、年代横断でVault音源を編纂した企画としては2019年の『Originals』以来第2弾となります。
プロデュースはロンデル・マクミラン、チャールズ・スパイサー・ジュニア、クリス・ジェームズが担当し、全曲のリミックスおよびマスタリングをクリス・ジェームズ(CIP)が手掛けました。
アートワークに込められた意図については、デザインを担当した「500 Prince Songs」のFacebook投稿で次のように明かされています。

私が手がけた、次のプリンスのアルバムのカバー(アートワーク)です。8月28日にリリースされます。
彼のキャリア全体にわたる未発表音源を収録したこのアルバムにおいて、デザインの指示書(ブリーフ)は「どの時代とも明確に結びつかない、一目でプリンスだとわかる象徴的なビジュアルを作り出すこと」でした。
これを実現するために、私は時代に左右されない「普遍的な要素」に焦点を当てました。それは、コンサートのスモークと照明に包まれ、愛用のホーナー・マッドキャット(Hohner Mad Cat)ギターを手にした、本来の居場所であるステージ上のプリンスの姿です。シルエットにすることで、まさに「タイムレス(時代を超越したもの)」に仕上げています。
使用している書体は、プリンスらしさを感じさせつつも、特定のアルバムを直接連想させないように、私が特別にデザインした独自のものです。

収録曲解説

1.I Am You (1977)

デビュー前夜の1977年にサウンド80で録音された最初期のスタジオ音源です。長年1978年の自宅録音と推測されていましたが、エンジニアのデヴィッド・リヴキン(デヴィッド・Z)と共に録音された事実が本作で正式に判明しました。ライヴでは1979年1月の初ソロ公演(カプリ・シアター)でのみ披露されています。
心地よいエレピとギターカッティングに乗る瑞々しいファルセットが印象的なスウィート・ソウルで、後半の熱量あふれるシャウトにはすでに初期プリンスらしさが宿っています。この曲の音楽的エッセンスは、後にザ・タイムのI Don't Wanna Leave You(1982年)へと受け継がれました。

2.Tick, Tick, Bang (1981)

1981年夏にハリウッド・サウンド・レコーダーズで録音されたオリジナル・ヴァージョンです。後に1990年の『Graffiti Bridge』へ収録されたテイクは、1989年にジミ・ヘンドリックスのドラム・サンプリング(「Little Miss Lover」)等を取り入れてゼロから再録音されたものでした。
本作に収録された1981年版は、後のサンプリング主体のファンク・トラックとは異なり、『Controversy』期の鋭利なエネルギーが炸裂するアグレッシブなニュー・ウェイヴ/パンク・ロックに仕上がっています。歪んだギターと叫ぶようなボーカルが生々しく響き、当時のプリンスの衝動的な熱量をダイレクトに感じられる貴重な初期テイクです。

3.Heaven (1985)

1985年5月26日、ハリウッドのサンセット・サウンドで録音されたナンバーです。スザンナ・メルヴォワンがバック・ボーカルで参加しており、後に構想されつつもお蔵入りとなったミュージカル企画『The Dawn』の収録曲候補にも挙げられていました。
『Around The World In A Day』から『Parade』へと至る時期ならではの、サイケデリックでスピリチュアルな空気感をまとったトラックで、スザンナとの神秘的なボーカル・ハーモニーに乗せて、「私たちが愛し合おうとすれば、この地上こそが天国になる(Heaven will be here on earth if we just try and love)」という強いメッセージや魂の解放が歌われており、当時のプリンスが探求していた精神世界が色濃く反映されています。

4.I Wonder (1989)

1989年8月5日にペイズリー・パーク・スタジオで録音された楽曲です。1991〜1992年に追加録音が行われ、2000年の「Prince: A Celebration」ではファン投票によりお蔵入りとなった『Crystal Ball Vol. II』の収録曲(当時の表記は「Eye Wonder」)に選出された経緯を持ちます。本作にはオリジナルの1989年録音テイクが収録されました。
跳ねるような心地よいR&Bビートと煌びやかなシンセが印象的なミディアム・ナンバーです。「彼女は僕のことを考えてくれているだろうか」「どれほど愛しているか知っているだろうか」と、去っていった相手への募る想いや切ない未練を、多重コーラスやスポークンを交えた表情豊かなボーカルで情感たっぷりに歌い上げています。

5.With This Tear (1991)

1991年11月19日にペイズリー・パーク・スタジオで録音された珠玉のバラードです。
本作はセリーヌ・ディオンの1992年のアルバム『Celine Dion』に提供された楽曲として知られています。当初はジェヴェッタ・スティールへの提供が検討されていましたが、セリーヌの歌声に惹かれたプリンスが彼女へと贈り、セリーヌ側も元々アルバムに予定していた映画『バグダッド・カフェ』の「Calling You」を差し替えてまで採用を決定しました。プリンスが「もしプロデューサーを選べるならウォルター・アファナシエフにお願いしたい」と添えた希望通り、当時セリーヌと組み始めたばかりのウォルターがプロデュースを担当し、夫レネ・アンジェリルの50歳の誕生日(1992年1月16日)に録音されたというドラマティックな背景を持っています。
プリンスがこの世を去った直後となる2016年4月28日には、彼女の公式Youtubeには当時のインタビュー動画がアップされました。

クレア・フィッシャーによる壮麗かつ繊細なオーケストレーションを背景に、プリンス自身が絞り出すように歌うボーカルは圧巻のひと言です。失われた愛の痛みや悲痛な叫びを、柔らかなファルセットから情感豊かな地声、そして胸を締め付けるようなフェイクへとダイナミックに昇華させており、セリーヌ版の圧倒的な歌唱とはまた異なる、プリンスならではの孤独と哀切が濃密に刻み込まれています。

6.Stone (1995)

元々はサンドラ・セント・ヴィクター、V・ジェフリー・スミス、ジュールズ・ヴァン・ヴィーンが制作した楽曲「Nothing Left To Give」が原曲です。当時お蔵入りとなっていたサンドラのソロ・アルバム『Sanctuary』の音源を聴いたプリンスがアプローチし、1995年春に彼女から送られたデモ素材をもとにコラボレーションが行われました。
プリンスが新たな詞やメロディを大幅に加える形で再構築し、1995年4月30日にペイズリー・パーク・スタジオで録音(ドラム/プログラミングはカーキー・J)。未発表プロジェクト『Playtime By Versace』や1996年春の『Emancipation』初期構成案にもリストアップされていました。2018年に日の目を見たサンドラのオリジナル版とは大きく異なる仕上がりになっており、他者の原曲をプリンスならではの美学とサウンドで完全に塗り替えた制作プロセスの妙を味わえるトラックです。

参考Sanctuary / Sandra St. Victor ('18)

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7.Calabama (2003)

2003年1月21日にペイズリー・パーク・スタジオで録音された、『Musicology』前夜に進められていた未発表アルバムの表題曲とされるファンク・ナンバーです。ドラムにはジョン・ブラックウェル、ホーンにはグレッグ・ボイヤーらがクレジットされています。
「All the pretty ladies clap your hands」というキャッチーなフックと軽快なホーン隊、タイトな生ドラムが牽引するアップテンポなパーティー・チューンです。曲の後半ではレコード会社への痛烈な風刺や音楽的自立を語るラップへとシームレスに展開し、同じく未発表曲である「Prince And The Band」の原型となった構成が生々しいジャムの熱量とともに記録されています。

"Record labels used to be a friend of mine Now they're just a modern middle waste of time / Sell a million records, make a dollar a pop aaaStill unrecouped when your band get dropped"
(かつてレコード会社は友だったが、今や時間の無駄にすぎない / 100万枚売って手に入るのはわずか1ドル、バンドをクビになる時にはまだ借金まみれだ)
—— Prince「Calabama」より

8.The Guilty Ones (2007)

2007年10月26日にペイズリー・パーク・スタジオで録音されたナンバーです。当時特定のプロジェクトを想定していたかは不明ですが、歌詞の一部は2008年に刊行された写真集『21 Nights』に掲載されていました。
コーラ・コールマン=ダンハム(Dr)とジョシュ・ダンハム(B)のリズム隊に、マーヴァ・キングとシェルビー・Jのバック・ボーカルという、同年のロンドンO2アリーナ21夜連続公演期を支えた鉄壁のバンド編成による演奏です。タイトで重厚なリズムに乗せて、女性陣の力強いコーラスとプリンスの切れ味鋭いギターが絡み合う骨太なファンク・ロックで、当時のライヴさながらの熱気とグルーヴが、スタジオ録音でも存分に堪能できます。

9.Bestest Friend (2012)

2012年9月3日にペイズリー・パーク・スタジオで録音されたトラックです。マイケル・B・ネルソン率いるNPG Hornzが参加していますが、録音当時に特定のプロジェクトを想定していたかは不明です。
洗練された重厚なホーン・セクションとメロウなエレピが心地よい、ジャジーでビター・スウィートなR&Bバラードです。かつて「無二の親友(bestest friend)」であり「完璧な相性(perfect blend)」だった相手との関係の破綻や裏切りを、ナイフや傷口といった生々しい比喩を交えて赤裸々に歌っています。抑制を効かせた語りかけるようなボーカルから感情的なファルセットへと展開し、深まる孤独と失望をクールでドラマティックに描き出した円熟味が際立つ1曲です。

10.How Come You Don't Call Me Anymore (Live) (2016)

2016年3月4日、カリフォルニア州オークランドのオラクル・アリーナで行われた〈Piano & A Microphone Tour〉のライヴ音源です。スタジオ録音を中心とした本作において唯一のライヴ・トラックであり、アルバムのラストを感動的に締めくくっています。

ピアノの弾き語りという極めてシンプルな編成ながら、ブルージーで力強いピアノの打鍵、親密に観客を巻き込むコール&レスポンス、そして感情をダイレクトに爆発させるシャウトや繊細なファルセットまで、晩年のプリンスが到達した圧倒的な表現力が刻まれています。
プリンスは本ツアーのライヴ・アルバム制作を示唆しており、自身が「これまでのツアーでベスト」と称賛した2016年4月14日のアトランタ公演(2ndショウ)の音源を一部公開(翌日には同ライヴから「Black Sweat」をTidalで配信)した経緯がありました。本作に収録されたオークランド公演の素晴らしい演奏を耳にすると、世界中のファンが今なお公式リリースを切望してやまないアトランタ最終公演を含めた、〈Piano & A Microphone Tour〉の完全なライヴ盤の登場を願わずにはいられません。

まとめ

未発表スタジオ音源から晩年のライヴ音源まで、約40年に及ぶキャリアの断片を凝縮した『Timeless』。その表題に偽りはなく、どのトラックにもプリンスならではの比類なき才能が詰まっていて、まずはこうした貴重なアーカイヴが公式にリリースされたことを素直に喜びたいと思います。

1999年のThe Vault… Old Friends 4 Saleが当初は評価が分かれながらも、今や名曲揃いの重要作として愛されているのと同様に、本作に収められた1曲1曲もまた聴きどころに満ちた素晴らしいクオリティを誇っています。しかし同時に、プリンスという底知れない音楽家の全貌を伝えるには全10曲というヴォリュームはあまりに少なく、かえって聴き手の渇望をさらに深めたのではないでしょうか。

「The Vault Has Been Freed.(保管庫は解放された)」と高らかに宣言された今、エステートには今後の継続的なアーカイヴの解放を強く期待したいところです。とりわけ、現在中断している『Parade』スーパー・デラックス・エディションのリリース再開や、プリンス自身が計画していた〈Piano & A Microphone Tour〉の完全なライヴ盤の実現など、保管庫に眠るかけがえのない遺産が正当な形で世に送り出され続けることを切に願っています。

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