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「I Wonder」か「Eye Wonder」か?―『Timeless』に浮上したもうひとつのクレジット疑惑

オフィシャルのライナーノーツでは「1989年の未発表曲」とクレジットされているこの曲ですが、海外のコミュニティ(Reddit)において、当時ペイズリー・パークおよびワーナー・ブラザースで制作に携わっていた元A&R担当者とされる人物から、その表記とテイクの取り違えを指摘する詳細な投稿がありました。

その証言によると、本作に収録されているのは80年代の原曲そのものではなく、1990年代にプリンス自身がオーバーダブを重ねて改題した「Eye Wonder」のテイクであると投稿されています。

エステート側からの公式見解が出ていない現段階において、この指摘を確定的な事実として断定することは避けるべきですが、証言の内容は当時の制作過程や楽曲の変遷と極めて整合性が高く、アーカイブの正確性を検証する上で看過できない重みを持っています。

「I Wonder」クレジット疑惑

事の発端は、Redditのプリンス・フォーラムにおいて、あるファンが「ブートレグで聴ける『I Wonder』は未完成・未承認のテイクであり、エステートが後年の完成テイクを公式リリースしたことに何の問題もない」とエステートを擁護したことでした。

これに対し、「当時A&Rとしてペイズリー・パークとワーナーの現場にいた」と語るStatus_Swimming2688氏が反論。現場を知る当事者として、以下の具体的な内情を明かしました。

相手(BountyBob氏)の主張:エステート擁護と「ブート未承認論」

『I Wonder』の何が問題なんだい? 長年聴かれてきたブートレグの音源はプリンスが承認したミックスでも何でもないし、未完成テイクにすぎない。80年代の録音と偽っているわけではなく、曲が書かれたのがその年代というだけのこと。プリンス自身が90年代初頭に手を加えて完成させたのだから、それを公式が出して何が悪いのか。未完成な初期テイクを出すより、本人が手を加えた完成形を出す方が筋が通っている。
僕たち部外者(outsiders)には保管庫の中に何があり、音源がどんな状態かなんて分かりっこないんだ。保管庫から出す以上、誰かが手を加えるのは避けられないことだよ。

この投稿に対してStatus_Swimming2688氏が投稿した内容がこちらになります。

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u/Soulpsychodelic from discussion

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PRINCE

問題なのは、彼らがこのトラックを「I Wonder」と表記している点です。『Timeless』に収録されているバージョンは、実際には「Eye Wonder」と呼ばれるものであり、90年代にオーバーダブが施されたテイクです。したがって、これを「80年代に録音された」と主張するのは、彼が公式リリースした「Xtralovable」(※2011年版)を「1982年の曲だ」と言い張るようなものであり、事実と異なります。

ブートレグで聴くことができるプリンスオリジナルの「I Wonder」は、80年代に彼自身が『Graffiti Bridge』の曲順に組み込んだプリンス自身のミックスでした。部外者のみなさんが「あれは未承認のバージョンだ」と考えたところで、何の意味もありません。プリンスはアルバムを全面的に見直す前に、あのブートレグのバージョンを正規のアルバム曲順に組み込んでいたのですから、部外者がどう思おうと、プリンス本人が承認していたバージョンだったのです。

当時A&Rの仕事をしていた私は、プリンスやペイズリー・パークと密に連絡を取り合い、彼が何をリリースしたがっているのか、ワーナー・ブラザース(WB)へ候補作として何を送ってきたのかを把握していました。事情を知らない部外者の感覚は理解できますが、私は部外者の一人ではありませんでした。

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u/Soulpsychodelic from discussion

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PRINCE

ワーナーは『Graffiti Bridge』のアルバム/ミュージカル劇の初期バージョンを却下しました。別のものを求めたからです。そのためプリンスは映画のアイデアを考案し、他アーティストと分け合う新しいサウンドトラックという形を提案しました。つまり、プリンス自身は元のままリリースしたがっていたのですから、彼に非はありません。

その後、彼はこのトラックにさらに手を加え、別のアルバムの曲順に組み込みましたが、これは90年代のことです。つまり、この曲の「もう一つの完成形」でした。彼のトラックには「完成形」と呼べるテイクがいくつも存在し、完成形が一つだけとは限りません(好例が「Computer Blue」であり、『Purple Rain』の各種テストプレスに収録された6つの完成バージョンや、タイトル曲も同様です。これらはすべてプリンス自身がリリースを望んだものの、ワーナーに拒否された「完成形」でした)。

プリンスは、80年代のオリジナルの「I Wonder」をマスタリングし、いつでもリリースできる状態にしていました。その後、『O(+>(ラヴ・シンボル)』期に彼は保管庫(Vault)からこのトラックを取り出し、新たな音を追加しました。彼自身の音楽ですから、自分の好きなように手を加えるのは全く正当な行為です。そして曲名を「EyeWonder」と改題しました。今回の『Timeless』に収録されているのはまさにこのバージョンであり、80年代ではなく90年代のものです。

プリンスが保管庫の素材にどうラベルを貼っていたのか、私は知りません。私は彼の保管庫に立ち入ったことはありませんし、そうした質問は中に入った経験のある別の人に尋ねるべきでしょう。

私の問題意識は、『Timeless』に収録されたこの曲の形態そのものにあるのではありません(耳の不自由な人向けのような雑なリミックスを施して『Timeless』に放り込むくらいなら、プリンスがミックスした通りの音にしてくれた方が良かったとは思いますが。また、彼がアルバムに組み込んだ「真の」完成版を出したいのなら、最後にアルバム候補として組まれたロージー・ゲインズのバックボーカル入りバージョンを出すべきでした)。最大の問題は、間違いだらけのライナーノーツの中で、これが「80年代のバージョンである」と偽って主張されている点にあります。

プリンス自身が自らの音楽に手を加えたり作り直したりするのは創作プロセスの一環であり、何ら悪いことではありません。問題なのは、他人が彼の作品に手を加え、「プリンスならこうやったはずだ」「プリンスがやったことだ」と言い訳に使うことです。彼は明らかにそんなことはしていません。 彼の音楽やアートは、彼が遺したそのままの形にしておくべきです。 プリンス自身のミックスをそのままリリースするか、彼が遺した通りに正確に再現し、(リ)マスタリングを施せばいいだけです。それは難しいことではなく、彼らが現在行っている手法よりも安上がりであり、金を巻き上げるための「どこかのファンによる勝手な解釈」ではなく、プリンスが遺した形に限りなく近い音が得られるはずです。

元A&R(Status_Swimming2688氏)の返答:内部の事実に基づく反論

1. 80年代のテイクは「未承認」ではなく、本人が承認した完成形だった

ブートレグで知られる1980年代後半の「I Wonder」は、当時プリンス自身がアルバム/舞台劇としての『Graffiti Bridge』の曲順に正式に組み込み、マスタリングまで済ませていたミックスでした。ワーナー側が内容の変更を求めたことで当時のリリースは見送られましたが、プリンス自身が承認した正規のテイクであったことは明白であると証言しています。

2. 『Timeless』に収録されたのは90年代の「Eye Wonder」

その後、プリンスは『Love Symbol』期(1990年代初頭)に保管庫からこの曲を取り出し、新たなシンセやアレンジなどのオーバーダブを施してアップデートを行いました。その際、タイトルも目のマークを用いた「Eye Wonder」へと改変されています。
つまり、『Timeless』に実際に収録された音源はこの90年代のテイクであり、ライナーノーツにある「80年代の録音」というクレジットは明らかな事実誤認(あるいは偽装)であると指摘しています。

3. 問題の本質は「歴史の書き換え」と「他者による改変」

同氏は、「I Wonder」における問題は他人が音を足したことではなく、プリンス自身が90年代に手を加えたテイクであるにもかかわらず、エステートが事実を誤認(あるいは偽装)して「80年代の録音」としてクレジットした点にあると強調しています。
その上で、この問題は「Calabama」における他者によるオーバーダブ事件と根底でつながっていると指摘します。

  • プリンス自身の改変と、他者による改変の決定的な違い
    プリンス本人が過去の自作曲に手を加えて作り直すのは正当な創作プロセスである。しかし、エステートのように「他人が音を足し、さもプリンスの意図であるかのように言い訳すること(=Calabamaの問題)」や、「本人が後年手を加えた事実を正しく把握・表記できないこと(=I Wonderの問題)」はまったくの別問題である。
  • オリジナルの尊重
    現代的なウケを狙って勝手な解釈やリミックスを施すのではなく、プリンスが完成させ、遺したそのままのマスターやミックスを忠実に再現して世に出すべきである。

問われるアーカイブの正確性とライナーノーツの重み

プリンスが生前ブートレグを嫌悪していたことを思えば誠に心苦しい話ですが、かつて非公式な音源を通じて原曲に触れていた私のようなファンの間では、『Timeless』のリリース当初から「この『I Wonder』も誰かに改変されたのではないか?」という疑念が少なからずありました。しかし、今回の証言にある「録音年代・テイクのクレジットの誤り(90年代にプリンス自身が手を加えた『Eye Wonder』テイクだった)」という説明であれば、音の差異についても合点がいきます。

エステートから公式なアナウンスがない以上、これが意図的な演出だったのか、それとも単なる確認不足によるミスなのか、現時点で真相は分かりません。しかし、どちらであったとしても、アーカイブの正確性を揺るがす重大な不備として問題視されるのは避けられないでしょう。このクレジット疑惑についても、まずはエステート側からの真摯な説明を待ちたいと思います。

本来、こうした歴史的音源を世に出す際には、録音年月日やトラックごとの詳細な制作経緯を正確にブックレットへ記録するのがアーカイブ作品の通例であり、最低限のルールです。正確で充実したライナーノーツを提供することは、作品の歴史的価値を高める送り手にとっても、それを大切に受け取るファンにとっても、等しく有益なはずです。プリンス・エステートには、目先のセールスだけでなく、そうした記録の重みと価値を今一度正しく理解してほしいと願わずにいられません。

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