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The Lover In Me / Sheena Easton ('88)

シーナ・イーストン / ザ・ラヴァー・イン・ミー

Released:1988/11/7 | Label: EMI Records

Listen on Apple Music

Track List

  1. No Deposit, No Return (5:57)
  2. The Lover In Me (5:01)
  3. Follow My Rainbow (4:53)
  4. Without You (5:34)
  5. If It's Meant To Last (4:09)
  6. Days Like This (5:09)
  7. One Love (4:55)
  8. 101 (4:08) P
  9. Cool Love (4:04) P
  10. Fire And Rain (5:57)
  11. The Lover In Me (Extended Dub Version) (7:31)
  12. Days Like This (7" Version) (4:12)
  13. 101 (The Remix) (7:58)
  14. No Deposit, No Return (Radio Edit) (4:49)

上で紹介した"Cherry Pop Record"版には11-14のボーナス・トラック付き

Personnel

Produce

  • L.A. & Babyface (1-3, 6, 7)
  • Jellybean (5)
  • Prince (8, 9)

Written

  • Babyface, Kayo, L.A. Reid, Daryl Simmons (1)
  • Babyface, L.A. Reid, Daryl Simmons (2, 6)
  • Babyface (3)
  • Babyface, L.A. Reid (7)
    Angela L. Winbush (4, 10)
  • Allee Willis, Danny Sembello (5)
  • Prince (as Joey Coco) (8, 9)

Guest

  • Prince (all instruments [uncredited]) (8,9)

Music Video

アルバム制作の経緯とプロデューサー陣

前作『No Sound But a Heart』(1987年)がレコード会社の再編に伴いアメリカ本国で発売中止になるという不運に見舞われたシーナ・イーストン。心機一転、MCAレコードへと移籍して1988年11月にリリースされた通算9作目のスタジオ・アルバムが本作です。

当時、プリンスとの交際説や音楽的な結びつきの強さから「プリンスによる全面プロデュース作になるのではないか」という噂も囁かれていました。実際にシーナ側からフルアルバムのプロデュースを打診したものの、当時のプリンスは『Sign o' the Times』ツアーや自身のプロジェクトで多忙を極めていたためスケジュールの調整がつかず、最終的に楽曲提供という形に落ち着くことになります。

そこでレーベルと彼女が白羽の矢を立てたのが、当時ジャム&ルイスと並んでR&B/ポップス界のトップへと駆け上がっていたL.A.&ベイビーフェイスでした。さらに、マドンナの初期作品を手掛けソロ作『Just Visiting This Planet』でも脚光を浴びていたジョン・“ジェリービーン”・ベニテス、アイズレー・ファミリー関連でも知られる実力派アンジェラ・ウィンブッシュらをプロデューサーに抜擢。当時シーンを席巻し始めていたニュージャックスウィングや最新鋭のアーバンR&Bのリズムを大胆に取り入れ、従来のポップ・シンガー像からスタイリッシュな大人のR&Bシンガーへと、劇的なイメージの刷新を図りました。

楽曲について

アルバム全体の推進力となったのは、やはりL.A.&ベイビーフェイスが手掛けたタイトル曲「The Lover In Me」でした。跳ねるニュー・ジャック・スウィングのビートに乗せて、少し鼻にかかったタイトで小悪魔的なボーカルを聴かせるこの曲は、全米2位(R&Bチャート5位)、全英15位と世界的な大ヒットを記録。『Sign o' the Times』の「U Got The Look」で見せたシャープでコケティッシュな魅力が、この最新のダンス・グルーヴに見事な形で昇華されています。

続く「Days Like This」や「No Deposit, No Return」でもベイビーフェイス節全開のキャッチーでファンキーなサウンドが展開される一方、アンジェラ・ウィンブッシュが制作した「Fire and Rain」のような濃厚でソウルフルなスロー・ナンバー、ジェリービーンによる軽快なダンス・ポップ、さらには自身がゲスト出演した人気テレビドラマ『マイアミ・バイス』の劇中歌「Follow My Rainbow」まで、バラエティに富んだ楽曲が並びます。

個人的にも近年の中でベストな作品になったと思ったのですが、当時のメディアの反応は真っ二つに割れました。『Rolling Stone』誌が「今年最も満足度の高いカムバック作。明確なヴィジョンが彼女の歌唱力を引き出している」と絶賛し、『Billboard』誌が「スマートでセクシー、ソウルフル」と評した一方で、『People』誌は「高級車マセラティで除雪するような愚挙」と比喩を交えて過激なR&B路線への転換を酷評しました。しかし結果としてアルバムは全米ゴールド・ディスク(44位、R&Bチャート29位)を獲得し、本国イギリスでも5年ぶりのチャート復帰(30位)を果たすなど、彼女のキャリアを再び第一線へと押し戻す力強い復活作となりました。

プリンス提供曲にまつわるエピソード

全面プロデュースの打診と「Jaguar」の行方

「Sugar Walls」、「Eternity」、そしてデュエット曲「U Got The Look」に続く4度目のコラボレーションとなった本作。

  • 全面プロデュースの見送り: シーナは当初アルバム丸ごとのプロデュースをプリンスに依頼していましたが、多忙なプリンスはこれを丁重に断り、代わりにストックと新曲から「101」と「Cool Love」の2曲を提供しました。
  • 幻の収録曲「Jaguar」: 1987年1月中旬、本作への収録を念頭にプリンスは「Jaguar」という楽曲も録音していました。しかしこの曲はアルバムには収録されず、プリンスの手元にキープされた後、1989年にペイズリー・パーク・レコーズからリリースされたメイヴィス・ステイプルズのアルバム『Time Waits For No One』へと提供されることになります。

「101」:スタジオでのやり取りと制作エピソード

アルバムの8曲目に収録され、後に第3弾シングルとしてカットされた「101」は、当時のプリンスならではの密室ファンク感が充満した傑作です。作詞・作曲・演奏・プロデュースのすべてをプリンスが担当し、作曲クレジットには変名「ジョーイ・ココ(Joey Coco)」が使用されました。

  • 地下鉄のSEと不穏なムード: 1987年1月10日、サンセット・サウンドにて録音。地下鉄のドアが開閉するような効果音や、ミニマルでどこかミステリアスなシンセ・リフが印象的なトラックです。
  • チャートの成果: 全米ダンス・チャートで2位を記録するスマッシュ・ヒットとなりました。
  • スタジオでの生々しいセッション: 2012年のインタビューで、シーナはこの曲の録音時の様子を次のように振り返っています。

「プリンスとのお仕事は、いつも予期せぬ刺激に満ちていました。『聴かせたい曲があるからスタジオに来て』と呼ばれて駆けつけ、曲を聴かせてもらっても『まだよく掴めないわ』と答えると、『少し座って聴いててごらん』と言われるんです。そして彼が戻ってくるなり『さあ、歌おう』と。『でも、まだ完璧には覚えきれていないわ』と伝えると、『覚えているところだけでいいから、歌ってごらん』と促されました。
歌っている途中でメロディを外してしまい、思わず高音へと突き抜けてしまったテイクがあったのですが、プリンスは『本来のメロディとは違うけれど、すごく魅力的だからこれを活かして広げていこう』と言ってくれたのです。とても自然体で、スタジオならではの素晴らしい瞬間でした。何よりこのトラックの仕上がりが大好きです。これまでに歌ってきたすべての楽曲の中で、これが私の一番のお気に入りなんです」

「Cool Love」:ペイズリー・パークの完成期に生まれた名曲

アルバムの9曲目に配置され、「101」に続いてプリンス(ジョーイ・ココ名義)が全楽器の演奏とプロデュースを手掛けたミディアム・ファンク。

  • 制作時期と背景: 「101」の録音から1年以上が経過した1988年5月、完成したばかりのミネソタ州チャンハッセンにあるペイズリー・パーク・スタジオでベーシック・トラックが録音されました。
  • サウンドの質感: 乾いたドラム・サウンドとタイトなカッティング・ギター、そして粘りのあるベースラインは、まさにこの時期のプリンス直系のファンク・グルーヴです。後にシングル「101」のB面にもカップリングされ、アルバムの終盤を引き締める重要なアクセントとなっています。

Music Video

リイシュー盤

上記のリイシュー盤には"The Lover In Me (Extended Dub Version)"、"Days Like This (7" Version)"、"101 (The Remix)"、"No Deposit, No Return (Radio Edit)"がボーナス・トラックで収録されています。

101 (Uptown Remix)

”101"のシングルにはプリンスによる8:20の長尺リミックス"101 (Uptown Remix)"が収録されています。(残念ながらアルバム未収録)

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