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「Welcome 2 America」収録曲のまとめ

2021年4月8日に突如発表された「ウェルカム・2・アメリカ (Welcome 2 America)」のリリース(7月30日発売)情報。

参考プリンスの未発表アルバム「Welcome 2 America」が7月30日(スーパーデラックスは8月25日)にリリース

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2月頃に近年のスーパー・デラックス・エディションや「ORIGINALS」を手掛けたマイケル・ハウ(Michael Howe)氏の口から6月か7月頃に「Welcome 2 America」が出るというインタビュー記事が出ていましたが、”あの幻のアルバムじゃなくて同名ツアーのライブ盤だよね?”と勝手に解釈していました。まさか本当に出るとは...(マイケルさんが言うから間違いないんですけどね!)

今回のアルバムはPurple Rain1999、「Sign O' The Times等の未発表曲を含むデラックス盤やPiano & A Microphone 1983ORIGINALSといった作品も素晴らしかったのですが、”プリンスの意思で製作するも未発表となったスタジオ・アルバム”という点が大きく異なります。

無論聴いた事が無いので詳細は7月リリースのアルバムに解説が付くと思いますが、Vault等の情報を元に判る範囲でアルバムと曲紹介をしておきます。

Welcome 2 America

Listen on Apple Music

アルバムについて

20tenからWelcome 2 Americaへ

2010年7月4日にデンマークから〈20ten tour〉をスタート、10日には雑誌の付録として20tenをリリースするもツアーを早々に切り上げ、10月14日NYアポロ・シアターで〈WELCOME 2 AMERICA〉ツアーを開催する事を発表しました。(10月からは〈Prince Live 2010〉と名を変え11月18日で幕を閉じます。)

アナウンスでは、ツアーにはジャネール・モネイ、ミント・コンディション、エスペランサ・スポルディング、カサンドラ・ウィルソン等がゲスト参加すると告げ、更に"no two shows will be the same. I have a lot of hits …(同じショーは2つとないよ。僕は沢山のヒット曲を持っている。)”と何度も足を運ぶ価値があると宣言した通り、2010年12月ニュージャージー州イーストラザフォードからスタートしたツアーは、翌年7月から舞台をヨーロッパ、カナダ、そして2012年5月のオーストラリアと大規模に行われました。

20tenと平行してアルバムを製作

本作は同ツアーに合わせるため製作されたもので公式情報によればレコーディングは2010年春頃から行われていたという。時期的には「20ten」のリリース時には既に新作に着手してる事となり、ツアーの規模から考えても付録にした「20ten」はプリンスを知ってもらう呼び水で、「Welcome 2 America」が本丸だったのかもしれません。

今回発売となるアルバム『ウェルカム・2・アメリカ』は、変化しつづける世の中や政治的分裂、マスメディアによる情報コントロール、人種やジェンダーなどあらゆる差別や偏見など、今まさに2021年日本をはじめ全世界が直面している社会問題に対し、プリンスが抱いた懸念、心願った希望、描いた未来が記録されたパワフルかつメッセージ性の強い作品となっており、プリンス本人は2010年に「世の中は偽情報に溢れかえっている。ジョージ・オーウェルが警告していた未来そのものだ。僕たちはこのようなチャレンジングな時代を信念曲げずに生きなければならない」

(SONYの公式サイトより)

ジョー・オーウェルの小説1984を例に、来たるべき将来への警告とも取れるメッセージ性の強いタイトル・トラックを含んだアルバムを製作しましたが、理由不明のままリリースを断念する事となりました。

リリースしなかった以上プリンスの納得がいく形では無かったに事は理解した上で、その直前まで完成していたテープを元にパッケージ化されました。

プリンス・プロデュース、NPGのモーリス・ヘイズがコ・プロデュースで参加。
参加メンバーはモーリスの他にバック・ヴォーカルを務めるシェルビー・Jリヴ・ウォーフィールドエリサ・フィオリーロ、そしてジョン・ブラックウェルが1曲参加していますが、殆どの曲は当時24歳だったジェフ・ベックやハービー・ハンコックとの共演でも若きベーシスト、タル・ウィルケンフェルド(Tal Wilkenfeld)や、チャカ・カーンやBECK等を共演経験のある素晴らしいドラマーのクリス・コールマン(Chris Coleman)の3人の演奏によるものです。

収録曲紹介

初公開の音源も多いので、情報が判り次第随時追記していきます。

Welcome 2 America

発売に先駆けて公開されたタイトル・トラックは、アグレッシヴでファンキーなライブ・バージョンと異なり、The Warに通じる静かに語りかけるヴォーカルとシェルビー達バック・コーラスが印象的な1曲。
歌詞もGoogleやiPhone等の利用したネット社会やマスメディアによる情報過多、音楽産業や教育に対する警鐘...レコーディング(2010年3月)から10年以上過ぎた今でも古びる事もなく突き刺さってくる1曲。
(詳しくは池城美菜子さんによる意訳参照)

gumtaroさんから言われて気づきましたが、この曲1977年に制作されたと言われる未発表曲”Neurotic Lover’s Bedroom”にどことなく似ています。仮にそうだとすれば33年前のフレーズを蘇らせた事になります。

Running Game (Son of a Slave Master)

頬に"SLAVE"と書いていた頃を思い出すサブ・タイトルが付いた"Running Game (Son Of A Slave Master)"ではシェルビー、リヴ、エリサ達コーラス・チームを立てプリンスは更に一歩引いた形で参加したジャジーなナンバーに仕上がっています。

 

Born 2 Die

プリンスの友人でもある哲学者のコーネル・ウエスト博士がYouTubeで「私はブラザー・プリンスを愛しているが、彼はカーティス・メイフィールドではない。」と話していた動画を観て、モーリス・ヘイズに「そうか。そのうち判るよ」と語ったと言われる"Born 2 Die"は"Running~"と同じく2010年3月12日に録音。
歌唱法もさる事ながらメッセージ性においてもカーティが歌っても違和感のないネオ・ソウルとプリンス流のファンクが見事に融合。アルバムのリリースに先駆けカーティスの誕生日となる6月3日に公開されたのもリスペクトを込めたエステート側の粋な演出だと思います。

 

1000 Light Years From Here

タイトルこそ初ですが、HitnRun Phase Two収録の"Black Muse"の後半(4:30辺り)に組み込まれたという点ではオフィシャル・リリース済の曲と言えますが、こちらは2010年3月11日に録音されたオリジナル・バージョンで歌詞も異なります。
"Black Muse"の組曲としてラブ・ソング・テイストだった歌詞に対し、本作では”すべての子供達、どんな肌の色でも、教育を受ける事ができる”とアメリカに望むべき一千光年先の未来の姿を歌っています。(逆を言えば現実は違うという事を憂いていると内容と言えます)

 

Hot Summer

52歳の誕生日となる2010年6月7日、ミネソタ州のラジオ局"89.3 The Current“で流れた唯一の既発曲で当時のままのバージョンが収録。
若干22歳ながらジェフ・ベックやハービー・ハンコック等と共演経験のある若きベーシストのタル・ウィルケンフェルドと、パティ・ラヴェルや後にベックなどと共演経験のあるクリス・コールマン(ds)の初顔合わせの2人を迎えたという事で話題になりました。楽曲はザ・タイムの"Shake!"を連想させる様な軽快なナンバーで、正にタイトル通り夏にピッタリの1曲。

余談ですが、The Currentと言えば2010年2月26日に発表された”Cause And Effect”はラジオで流しましたが収録されないまま。こちらは噂された20ten DELUXE用だったかもしれませんね。いつか日の目を見るが来ますように。

 

Stand Up and B Strong

ミネアポリスのロックバンド、ソウル・アサイラム(Soul Asylum)のThe Silver Lining('06)に収録された1曲で、本作唯一のカヴァー曲で2010年3月19日に収録されたと言われています。
同カヴァーは2007年に初代NPGのマイケル・B(ds)とソニー・T(b)でレコーディングしましたがお蔵入り。W2Aバージョンではタルとクリスを迎えて再録、ヴォーカルにエリサを迎えオリジナルより爽快なロックでファンキーなアレンジが施されています。プリンスの手にかかるとカヴァーもオリジナルに聴こえます。

 

Check The Record

2010年3月10日にレコーディングされたとされる楽曲ですが当時はリリースされず、2013年1月18日にダコタ・ジャズ・クラブで行われた3rdeyegirlとのライブで披露されました。
この日の演奏は3rdeyegirlとの共演だったのでエッジの効いたハード・ロック・サウンドですが、W2A版はプリンスのギターが映え、コーラスによるヴォーカルの厚みとタル・ウィルケンフェルドのベースが光るグルーヴ感のあるサウンドに仕上がっています。

 

Same Page, Different Book

”1000 Light Years From Here”と同じ2010年3月11日に録音された曲ですが、2013年1月6日に3rdeyegirl名義によるYouTubeを通じて配信。同バージョンが収録されました。
ここで言う"Book"は聖書の事で、”同じページを読んでいるのに違う本”と宗教による解釈の違いと”What r we, what r we, what r we fighting 4? (私たちは何のために、何のために戦っているのだろう?)”という戦争に対するメッセージが込められた1曲です。

 

When She Comes

HitnRun Phase Twoに収録された曲は2014年に追加レコーディングされたもので、今回収録された音源は2010年3月12日に録音された"ベーシック・トラック版"となります。
NPGのメンバーやホーン隊が参加した前述のバージョンも良かったですが、こちらはシェルビー達女性コーラスが参加せずプリンス一人による多重録音のコーラスが存分に楽しめます。

 

1010 (Rin Tin Tin)

2010年に録音されたと言われてますが正確な録音日は不明、2017年にイギリス・ロンドンのO2で開催されたプリンス展『My Name Is Prince』の歌詞の一部が公開され話題になった一曲。サブタイトルはの”Rin Tin Tin"とは『名犬リンチンチン』で”テン・テン=チン・チン”と略しているものと思われます(歌詞にはローン・レンジャーの名も)。
プリンス一人で演奏を担当した曲は、キーボードによるスローなAメロから徐々に音色が増えるファンク・ロックに移行。前述の意味深な歌詞も印象的な一曲です。

 

Yes

"Welcome 2 America"と同じ2010年3月15日に録音されたと言われる曲。アメリカ(世界)に問題提起している前者に対し、"Yes"では”brand new nation(新しい王国)”に導くという歌詞。ポジティブなサウンドも相まって元気になりますが、捉え方によっては現世に区切りをつけ新世界にEXSODUS(脱出)しようとも受け取れます。(この自由な解釈が出来る所がプリンスの歌詞の素晴らしい所の一つ)
そう思うと、チアリーダーの様な掛け声で歌う"Y.E.S"もキリストを連想させるあたりプリンス流の讃美歌にも聴こえてきます。

"Yes"というタイトルは、ザ・ファミリーに提供していますが同名異曲です。

 

One Day We Will All B Free

2010年3月に録音されたと楽曲でタルとシェルヴィー、エリサ、リヴのコーラスが参加したラスト・ソングのタイトルは”ある日、私達はすべて自由になります”。
希望を託した穏やかな楽曲ですが、歌詞の中には同じ神の創造物なのに自由でなかった境遇、アメリカ合衆国で最初の重要なアフリカ系科学者のベンジャミン・バネカーの功績、対してジョージ・ワシントンやベンジャミン・フランクリンへの批判はOne Nite Alone...収録の"Avalanche"に通じるものがあります。

 

まとめ

日本語対訳が無いので解釈がズレてるかもしれませんが、これまでのアルバムの中で最も社会的メッセージが強く表れたアルバムであることは間違いないです。

何故このアルバムをリリースしなかったのか...話題作になる事は間違い無かったハズ。
あくまで想像ですが、このアルバムを引っ下げ同名タイトルでのツアーを行うと、メッセージの強いコンサートと受け取られかねなかったかもしれません。
そのリスクを回避する為にリリースしなかったのかも...
現時点でライブ映像を観ていないのでレビューはいずれ書きますが、イングルウッドでのライブはぶっ飛ぶ事間違いなしですね!

公式チャンネルで全曲視聴可

プリンスのYouTubeチャンネルで全曲視聴出来るようになりました。

 

おまけ

2010年7月のインタビューで”The Internet is completely over (インターネットは完全に終わった)”と語るプリンス。更に

"I don't see why I should give my new music to iTunes or anyone else. They won't pay me an advance for it and then they get angry when they can't get it."

ぼくの新曲をiTunesなどに提供しなきゃならないのか全く意味がわからないね。彼らはぼくに前金も払わないのに音源をもらえないと怒るだよね

https://www.billboard.com/

とオンライン配信に背を向けました。
プリンスの公式サイトLotuflow3rは、上記インタビューの4ヶ月前となる2010年3月23日に閉鎖。

もしサイトを継続していたらOne Nite Alone...の時と同じく理解してくれるファン向けにだけリリースしてくれたかもしれませんね。

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