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Prince / 愛のペガサス ('79)

アルバム情報

Released:1979/10/19 | Label: Warner Bros.

Listen on Apple Music

Track List

  1. I Wanna Be Your Lover (5:47)
  2. Why You Wanna Treat Me So Bad? (3:49)
  3. Sexy Dancer (4:18)
  4. When We're Dancing Close And Slow (5:18)
  5. With You (3:59)
  6. Bambi (4:22)
  7. Still Waiting (4:14)
  8. I Feel For You (3:24)
  9. It's Gonna Be Lonely (5:26)

Personnel

Produce,Arranged,Composed

Prince

Heaven-sent Helpers

Andre Cymone, Bobby Z

アルバム・レビュー

アルバム・リリースまでの動き

ワーナーとの契約で大金を手に入れたプリンスは、ミネアポリスに家を借り、当時のガール・フレンドと同棲しながら地下にホーム・スタジオを作り上げます。好きな時間にレコーディングできる夢のような環境を手に入れたわけですが、事態はそう甘くありませんでした。莫大な制作費を注ぎ込んだデビュー作『For You』はビルボード・チャート163位と振るわず、ワーナー側の期待を裏切る結果に。マネージャーとも仲違いして解雇するなど、早くも厳しい状況に立たされます。

この重い空気を打破するため、プリンスは「制作費を抑えて前作以上のものを作る」という高いハードルを自らに課します。
エグゼクティブ・プロデューサーを外して完全な独り立ちを果たすと、1979年4月からカリフォルニアのアルファ・スタジオで録音をスタート。途中ロサンゼルスで作業を行うものの、経費がかさむと分かるとマネージャーに機材を手配させてミネソタ州オロノ市の新しい自宅に持ち込み、そこでミックス作業を継続しました。一部デビュー前に制作されたものもありますが、実質たった6週間という短期間で、作詞・作曲から演奏、アレンジ、プロデュースまでを一人で完結させました。

ちなみに、日本では『For You』はリリースされず、本国から約4ヶ月遅れとなる1980年2月25日に『愛のペガサス』という邦題付きで日本デビューを飾ります。

楽曲について

テクニックを見せつけるように音を詰め込み、仰々しい印象を与えた前作の反省から、本作では余分な音数を削ぎ落とし、シンプルかつシャープなサウンドを実現しています。そして本作を語る上で欠かせないのが「女性の影」です。大ファンだったパトリース・ラッシェンへの熱い思いや、同棲していたキム・アップシャーとの甘い生活、そして別れの悲しみなど、当時のプリンスの個人的な感情がストレートに音と歌詞に反映されています。
水色のシンプルな背景とフォント、そしてトップレスで正面から見つめるユルゲン・ライシュ撮影のアートワークは”包み隠さず真摯に向き合う姿勢”を全面に押し出しています。一方で背面はペガサスに乗るというファンタジーのギャップも演出しており、この時期ならではのピュアな魅力と言えます。

I Wanna Be Your Lover

ディスコ・サウンドの波に乗る4つ打ちビートと、中盤から延々続くインストゥルメンタル・パートが心地よい6分に及ぶリード・シングル。元々は憧れのパトリース・ラッシェンに提供しようと書いたものの、断られてしまったという切ないエピソードも。当時ブラック・チャート(ソウル・チャート)ではマイケル・ジャクソンの「Rock With You」と首位を巡って熱く競い合い、見事に自身初の1位を獲得。ディスコ・チャートでも2位に輝くなど、プリンスを代表する1曲になりました。

Why You Wanna Treat Me So Bad?(つれない仕打ち)

愛するキムから振られてしまった感情をそのままぶつけたような、少し攻撃的な歌詞が特徴の失恋ソング。アンドレ・シモーンがバック・コーラスでこっそり参加しているとも言われる、ソリッドなロック調のセカンド・シングルです。

Sexy Dancer

ファンだったパトリース・ラッシェンの影響を強く感じさせる、シンセ・サウンドが印象的なディスコ・チューン。コーラス程度の短い歌詞でインストゥルメンタルに近い構成ながら、USクラブ・シーンでDJたちに愛され、ディスコ・チャートでも3位に食い込む人気を集めました。

When We're Dancing Close And Slow(寄りそうふたり)

シャイなプリンスの愛情がダダ漏れになった、極上にスウィートなミディアム・バラード。同棲していたキムとの蜜月ぶりを感じさせます。後にサード・アルバム『Dirty Mind』からの先行シングルのB面としても収録されました。

With You

こちらもキムの存在が少なからず影響を与えていると思われる、ピュアな恋心を綴ったロマンティックな楽曲。後にプリンス・ファミリーのジル・ジョーンズがプリンスからのリクエストで録音し、1987年の彼女のソロ・アルバムでカバーしたことでも知られています。

Bambi

同性愛の女性に「男の良さを教えてあげる」と強引にアプローチする、アルバム内で異彩を放つハードなロック・ナンバー。プリンス本人もかなりお気に入りの1曲で、後年エホバの証人に改宗して際どい曲をセットリストから外す中でも、この曲だけはライブで歌い続けました。

Still Waiting(愛を待ちながら)

キムとの破局の悲しみを綴ったと思われる、切ないサード・シングル。ちなみにLP盤とCD盤では収録時間が異なり、CD盤の方が冒頭一小節分ほど(約12秒)短くエディットされているというマニアックな違いがあります。

I Feel For You(恋のフィーリング)

「I Wanna Be Your Lover」と同じくパトリース・ラッシェンに提供するつもりで書かれた1曲。当時はシングル・カットされませんでしたが、1984年にチャカ・カーンがカバーして大ヒット。見事グラミー賞で最優秀R&Bソングを受賞するという快挙を成し遂げました。

It's Gonna Be Lonely

アルバムの最後を飾るのは、やはりキムに向けられたと思われる切実な失恋ソング。愛する人を失った孤独と悲しみをしっとりと歌い上げ、美しい余韻とともにアルバムの幕を閉じます。

セールスなど

「少ない制作費でヒットを出す」という自らに課した目標は、見事に達成されました。全米ビルボード・チャートで22位、ソウル・アルバム・チャートで3位をマークし、自身初となるプラチナ・ディスク(100万枚出荷)を獲得。このヒットを受けて、1979年11月から翌年にかけて初のアメリカ・ツアーを敢行し、ライブ・アクトとしての評価も確立し始めます。本作での成功は、ワーナーの信頼を回復させるとともに、次作『Dirty Mind』での過激な路線変更への大きな足場となったのです。

トリビア

お蔵入りになった幻のセッション

本作に収録された「I Feel For You」と「With You」ですが、実は1978年2月にニューヨークのミュージック・ファーム・スタジオでデモ録音されていたという裏話があります。94 Eastでプリンスを起用したペペ・ウィリーが、リトル・アンソニー&ジ・インペリアルズ(Little Anthony and the Imperials)へ楽曲提供するためにプリンスとアンドレ・シモーンをニューヨークに招き、曲を書かせたのがきっかけでした。このセッションでは他にも「Thrill You Or Kill You」や、アンドレ・シモーンによるオリジナルの「Do Me, Baby」を含む計4曲が録音されましたが、残念ながら彼らに採用されることはなく、当時はお蔵入りとなってしまった幻の音源です。

「Still Waiting」について

収録時間の関係か「Still Waiting」はLPでは4分24分ですが、CDは冒頭一小節分程短い4分14秒版が収録されています。

キム・アップシャーとの生涯の友情

悲しい別れを迎えたキムですが、その後もザ・タイムの楽曲でのバック・コーラスや、映画『パープル・レイン』でのウェイトレス役などで協力し合うなど二人の友情は続きました。しかし、2015年11月18日に彼女はこの世を去ります(一説には葬儀費用をプリンスが出したという話もあります)。
プリンス・ファミリーのジル・ジョーンズは2016年に掲載されたハフポスト(HuffPost)で、プリンスとキムの友情が続いていたことを明かしました。また、プリンスは「ピアノ&マイクロフォン・ツアー」中にヴァニティの訃報を受け、“I just found out a little while ago that someone dear to us has passed away(ちょっと前に、大切な人が亡くなったことを知ったんだ)”と語りましたが、ジルによればその言葉にはヴァニティだけでなくキムのことも含まれていたそうです。

'Some Guys Send You Flowers, Prince Gives You Albums': An Interview With Jill Jones | HuffPost Voices
'Some Guys Send You Flowers, Prince Gives You Albums': An Interview With Jill Jones | HuffPost Voices

www.huffpost.com

チャカ・カーンのカバーでグラミー賞を受賞

1984年にリリースされたチャカ・カーンの「I Feel For You」は大ヒットを記録。翌年のグラミー賞で最優秀女性R&Bヴォーカル・パフォーマンスと、最優秀R&Bソング(受賞者はプリンス)の2冠に輝きました。

40年の時を経てリリースされたデモ音源

アルバム・リリースから40周年を迎えた2019年、プリンスがアコースティック・ギター1本で弾き語る「I Feel For You」の貴重なデモ音源が、記念の限定7インチ・シングルとしてリリースされて話題を呼びました。

参考プリンスの名曲"I Feel for You”のデモ音源"I Feel for You (Acoustic Demo)"が緊急リリース【アナログ盤も発売】

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Music Video

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