アルバム情報
Released:1980/10/8 | Label: Warner Bros.
Track List
- Dirty Mind (4:11)
- When You Were Mine (3:44)
- Do It All Night (3:42)
- Gotta Broken Heart Again (2:13)
- Uptown (5:30)
- Head (4:40)
- Sister (1:33)
- Partyup (4:24)
Personnel
Produce, Arranged, Composed
- Prince
Written
- Prince
- Prince & Dr. Fink (music) (1)
- Prince & André Cymone (5) (credited to Prince)
- Prince & Morris Day (music) (8) (credited to Prince)
Additional Musician
- Dr.Fink (keyboards) (1,6)
- Dez Dickerson (guitar)
- Bobby Z (drums)
- André Cymone (base)
- Lisa Coleman (Keybord) (Vocal) (6)
アルバム・レビュー
アルバム・リリースまでの動き
前作『愛のペガサス(Prince)』(1979年)をリリースしたあと、プリンスは早い段階から”黒人アーティスト”という枠組みを打ち破りたいと考えていました。より幅広い層に自分の音楽を届けるため、スライ&ザ・ファミリー・ストーンに影響を受け、アンドレ・シモーン(b)、デズ・ディカーソン(g)、ボビー・Z(dr)、Dr.フィンク(key)、ゲイル・チャップマン(key)と共に人種・性別混合のバンドを結成します。1979年11月から初のツアーを行い、休む間もなくリック・ジェームスの全米ツアーにもサポート・アクトとして参加しました。
ツアー中も彼の創作意欲が止まることはありません。1980年4月にツアーを終えると、すぐにミネトンカ湖畔のノース・アーム・ドライブに借りていた自宅の地下室でレコーディングを開始。6月にはロサンゼルスでミックスを終わらせ、なんと前作からわずか1年足らずの10月に本作をリリースしてしまいます。極端な言い方をすれば、これがプリンスにとって地元ミネソタで録音した記念すべき最初のアルバムということになります。
また、バンドとしての活動が形になってきたことが作品にも色濃く反映されています。これまでは参加してもクレジットされなかったメンバーたちですが、今作ではDr.フィンクや新たに加入したリサ・コールマンらの名前が記され、アートワークにもバンドの写真が登場しました。ベッドの上で撮影したいというプリンスの提案に対し、写真家のアレン・ボーリューが廃品置き場から拾ってきたスプリング・マットの前で撮影するというアイデアを採用し、前作までのスウィートなイメージからの脱却を視覚的にも強く打ち出しています。
楽曲について
サウンド面では、前作までに確立したファンキーなダンス・ビートを残しながらも、ヨーロッパで流行していたパンクやニュー・ウェイヴ、そしてロックの要素を大胆に吸収。自分が単なるR&Bシンガーではないことを強烈に証明しています。一方、歌詞の世界はこれまでの「ラブ&セックス」をさらに過激に加速させつつ、社会的な倫理観を問うメッセージや反戦への怒りといった精神性も盛り込まれました。クレジットには「Somewhere in Uptown(アップタウンのどこか)」で録音されたと記され、新しいバンドの空気感を纏いながらプリンスの方向性を決定づけた画期的な傑作です。
Dirty Mind
オープニングを飾るタイトル曲。リハーサルでDr.フィンクが弾いたコード進行から生まれた、プリンス初のバンドメンバーとの共作クレジット曲です。深夜にフィンクを自宅スタジオに呼び出して録音し、翌朝には際どい歌詞とギターを加えた完成形を聴かせて「これが次のタイトル曲だ」と宣言したという、勢いに満ちたエレクトロ・ファンクです。
When You Were Mine
シンディ・ローパーのカバーでもおなじみとなった名曲。リック・ジェームスとのツアーでフロリダに滞在中、バンドメンバーが遊びに出かけている間にホテルの一室で書き上げられました。ニュー・ウェイヴ調の弾むようなポップなメロディに乗せて、未練たっぷりの失恋の痛みを歌い上げるコントラストが絶妙なナンバーです。
Do It All Night
ニュー・ウェイヴ色をさらに強めたシンセ・サウンドが耳を引くダンサブルな1曲。「一晩中君と愛し合いたい」という、ひねりのないストレートで熱烈なメッセージが印象的です。イギリスなど一部の国では、アルバムからのファースト・シングルとしてもリリースされ、彼の新しい音楽性を強くアピールしました。
Gotta Broken Heart Again
実は1977年頃から存在していたと言われる古い楽曲。スウィングするような明るく軽快なサウンドとは裏腹に、遠距離恋愛の恋人に振られて自暴自棄になっていく男の悲哀を歌っています。最後はマイクのスタンドがガシャーンと倒れるような衝撃音と共に、アナログ盤のA面が幕を閉じるというドラマチックな構成です。
Uptown
先行シングルとしてソウル・チャート5位を記録したファンク・ロック。女性から「ゲイなの?」と聞かれた主人公が、人種の壁も偏見もない理想郷「アップタウン」へ彼女を連れ出すという、以降の彼のテーマとなるメッセージが込められています。元々はアンドレのベースラインから着想を得た、うねるようなグルーヴが最高です。
Head
見知らぬ花嫁との過激な性行為を歌い上げる問題作。ツアー中のライブでゲイル・チャップマンに挑発的なパフォーマンスを強要し、彼女が脱退するきっかけの一つになったとも言われます。代わりに加入した当時20歳のリサ・コールマンが見事にコーラスとセリフをこなし、バンドの新たなキーパーソンとしての存在感を示しました。
Sister
16歳の時に32歳の姉から性教育を受けた、と歌う衝撃的なショート・パンク・チューン。異母姉シャロンの存在から自伝的なエピソードだとも噂されましたが、多感な少年の性の目覚めを描いた一つの表現という見方が強いです。いずれにしても、発表当時から最も物議を醸し、彼の過激さを象徴する1曲となりました。
Partyup
「お前らは勝手に戦争してろ、俺たちは戦いたくない」と怒りをぶつける、強烈な反戦ファンク。「Uptown」のような理想郷へ行こうと呼びかけ、ファルセットから地声へと変わる瞬間の熱量に圧倒されます。モーリス・デイのグルーヴを元に作られ、これが後の「ザ・タイム」結成のきっかけを生んだという歴史的なトラックです。
セールスなど
トレンチコートの下にビキニパンツだけを身につけたセンセーショナルなファッションや、過激な歌詞は当時の保守的な層には受け入れ難いものがあり、全米ビルボード200では最高45位、ソウル・チャートで7位という結果になりました。しかし、パンクやニュー・ウェイヴをいち早く取り入れた野心的で妥協のないサウンドは批評家から絶賛され、ローリング・ストーン誌でも星4.5という高い評価を獲得しました。
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Dirty Mind
www.rollingstone.com
リリース後のツアーではほぼ全曲が披露され、1984年にはゴールドディスク(50万枚)に認定されるなど、じわじわとファンを拡大していきました。これまでの成功をあっさりと払い除け、全く新しいジャンルレスなサウンドへと移行する姿勢。それを前作からたった1年という猛スピードで実現してしまったこのアルバムは、客観的に見てもやはり凄まじいエネルギーに満ちています。
トリビア
ラジオ局への警告シール
セクシャルで過激な内容の楽曲が多かったため、当時のアナログ盤のジャケットには「Programmers please audition prior to airing.(番組制作者は放送前にご試聴ください)」という異例の警告シールが貼られていました。

初の偽名「Jamie Starr」の登場
アルバムのクレジットにはエンジニアとして「Jamie Starr」という名前が記載されていますが、これはプリンス本人のことです。
プリンスが1980年代前半のサイド・プロジェクトなどで多用することになる「偽名」の記念すべき第一号となりました。
「ザ・タイム」結成のきっかけ
ラストを飾る「Partyup」のグルーヴを提供したモーリス・デイに対し、プリンスは「現金1万ドルか、レコード契約の手助けか」という2つの選択肢を提示しました。モーリスがレコード契約を選んだことが、のちの〈ザ・タイム〉誕生の直接的なきっかけとなりました。
幻となったクレジット
「Uptown」のベースラインは幼馴染のアンドレ・シモーンが考えたもので、「Partyup」には加入したばかりのリサ・コールマンがキーボードとコーラスで参加していましたが、最終的にどちらもアルバムのクレジットには名前が残されませんでした。
