アルバム『Timeless』に収録された「Calabama」のオーバーダブ問題は、後付けホーンを排した生音源EP『Calabama & Prince and The Band』が急遽配信されたことで、ひとまず落ち着いたように見えました。
ところが、実際に届いたアナログ盤(LP)を聴いたファンの方々の間で、また新たな話題が出てきました。
「アナログ盤の『Calabama』は、CDや配信とミックスが違うのではないか?」
実際に音源を確認してみると、単なるレコード特有の音質差ではなく、はっきりとした音の違いがありました。
「Calabama」検証:0分42秒の違い
レコードとCDの比較は、針やカートリッジ、再生機器の環境によって音の聴こえ方が変わるため慎重になる必要があります。ただ、今回の違いは音質ではなく「鳴っているはずの音が鳴っていない」という明確なものです。一番わかりやすいのが、曲が始まって「0分42秒」のところです。
CD/配信アルバム版
最初から最後まで生ホーンがしっかり入っているバージョン。
アナログ盤(LP)版
この0分42秒のホーンが鳴っていません。ホーンのトラックがオフになっていて、プリンスのシンセとドラムだけがすっきりと聴こえます。
※非公式のアップロードのため、今後削除される可能性があります
曲の中盤以降(プリンスが「Horns!」と叫ぶあたり)からはアナログ盤でも生ホーンが入ってくるので、完全な生音源(Vault Raw)というわけでもありません。
つまり、「CDとも違い、Vault Rawとも違う、前半のホーンの入り方が異なる別ミックス」がLPに収録されています。
公式に存在する3つのバージョン
これで、公式から出ている「Calabama」には3つのミックスが存在することになりました。
- CD/配信アルバム版
最初から最後まで生ホーンがしっかり入っているバージョン。 - アナログ盤(LP)版
0分42秒などの前半のホーンが入っておらず、途中からホーンが重なってくる別ミックス。 - EP版(Vault Raw)
後から配信された、後付けホーンが一切入っていない本来のプリンスの録音。
なぜこんなことが起きたのか?(推論)
公式なアナウンスがないため推測するしかありませんが、これは意図してバージョンを変えたというよりも、「製造スケジュールの都合で、間違ったマスターを工場に渡してしまった」可能性が高いのではないかと思います。
現在、アナログレコードの製造には世界的に時間がかかります。CDの発売日に合わせるためには、かなり早い段階で工場に音源データを納品しなければなりません。
おそらく制作の途中で、
- 前半のホーンをまだ詰めていなかった作業途中のミックスを、納期の関係で先にレコード工場へ送ってしまった。
- その後、さらにホーンを足して完成させたミックスをCD用に使った。
- 差し替えの連絡や確認がうまくいかないまま、作業途中のマスターでLPがプレスされてしまった。
という、制作進行上のミスだったのではないかと推測されます。意図的なものならどこかに記載があるはずですし、単なる手違いと考える方が自然です。
まとめ
かつての80年代のように、意図的にシングルや各国盤でテイクを変えていた時代ならまだしも、今回の件はそうした音楽的な面白みとして受け止める気には到底なれません。
オーバーダブの発覚から生音源の緊急配信に至るまで、エステート側の説明や対応には終始疑問が残るものでした。その直後に、今度はマスターの取り違えと思われるような別ミックスが平然とプレスされているのを見せつけられると、作品やアーティストに対する管理体制の杜撰さに、ただただ呆れるばかりです。