2014年11月、プリンスがある新鋭アーティストの楽曲をTwitter(現X、当時は@3RDEYEGIRL)でシェアしたことで、彼女は一躍注目を集めました。
あの出来事から11年。今年、彼女は待望の3作目となるスタジオ・アルバム『EUSEXUA』を発表。2025年末には『Rolling Stone UK』の表紙を飾り、インタビューの中で、彼女は自身のルーツとしてプリンスへの深い愛を語っています。
彼女を形作った「Entity」という哲学(Rolling Stone UKより)
約50分に及ぶインタビューの中から、プリンスについて触れたパートを抜粋しました。
「自分の貯金をはたいて、人生で初めて買った物理的なアルバムはプリンスの『Emancipation』でした。9歳から11歳くらいの頃に彼の世界に出会ったことで、彼がいかに素晴らしいアーティストで、卓越した『究極のワールド・ビルダー(独自の世界を構築する人)』であるかを理解し始めたのです。」
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参考Emancipation / イマンシペイション ('96)
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彼女にとって、プリンスは単なる憧れのスターではありませんでした。
「彼は、パフォーマー、ミュージシャン、作詞家、作家、そして『Entity(独立した表現者としての実体)』であることの本当の意味を教えてくれました。その存在は、私がティーンエイジャーとして成長し、一人のアーティストとして自分を見つめる方法に決定的な影響を与えたのです。」
FKA twigs Rolling Stone UK Interview
最新作『EUSEXUA』と、その余韻『Afterglow』
2025年1月にリリースされた最新アルバム『EUSEXUA(ユゼクシュア)』。このタイトルは「音楽やダンスを通じて自己を超越し、多幸感の絶頂にある状態」を指す彼女による造語。プラハのテクノ・シーンにインスパイアされた肉感的でスピリチュアルなサウンドからは、「自分を定義しようとする世間の声」から解放されようとする彼女の魂の叫びが伝わってきます。
本作のコンセプトは、かつてプリンスが「Love 4 One Another」という精神を掲げ、音楽を単なる娯楽ではなく、精神的な高揚やコミュニティの絆として捉えていた姿勢にも通じるところがあります。
さらに同年11月には、続編となる『EUSEXUA Afterglow』をリリース。当初はデラックス盤として構想されていましたが、制作過程で一つの独立した作品へと進化を遂げた全11曲の本作は、まるでプリンスのアフターショーを想起させるような、レイヴ(狂騒)が終わった後の“余韻”をテーマにしています。高揚感が身体に残り続ける、より内省的で官能的な響きに満ちた作品に仕上がっています。
2014年、ペイズリー・パークに落ちた一滴
ツイッグスとプリンスの繋がりは、遡ること11年前の2014年11月16日に始まります。まだデビュー間もなかった彼女の「Water Me」を紹介し、ペイズリー・パークに招き、サプライズ・ライブを行ったのは他ならぬプリンス本人でした。
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参考プリンスが3RDEYEGIRLのツィッターでFKA twigsの”Water Me”を紹介
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ライブ後の楽屋でカシスジュースを飲み、共に卓球に興じたというエピソードは有名ですが、彼女が語る「Entityとしての学び」は、あの日ペイズリー・パークで過ごした時間から直接受け取ったバトンだったのかもしれません。
晩年のプリンスは多くの若い才能に手を差し伸べましたが、本作『EUSEXUA』と『Afterglow』の源流にあるのは、あのペイズリー・パークでおきた一滴から始まったのかもしれません。
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参考女性アーティトをさりげなく支えたプリンス
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