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For You / フォー・ユー ('78)

アルバム情報

Released:1978/4/7 | Label: Warner Bros.

Listen on Apple Music

Track List

  1. For You (1:06)
  2. In Love (3:38)
  3. Soft And Wet (3:01)
  4. Crazy You (2:17)
  5. Just As Long As We're Together (6:24)
  6. Baby (3:09)
  7. My Love Is Forever (4:09)
  8. So Blue (4:26)
  9. I'm Yours (5:01)

Personnel

Executive Porducer

  • Tommy Vicari

Produce, Arranged, Composed

  • Prince

アルバム・レビュー

アルバム・リリースまでの動き

ミネアポリスに住む10代のプリンス(本名:プリンス・ロジャーズ・ネルソン、プリンス・ロジャース・ネルソンと表記も有)が、ワーナー・ブラザースと異例の大型契約を結び、世界に向けて放った記念すべきデビュー・アルバムです。18歳の時点でアルバムの原型をすでに完成させていたプリンスは、レコード会社の重役たちの前で全楽器を一人で演奏してみせ、その圧倒的な才能で彼らを驚嘆させました。その結果、当時19歳という若さながら、アルバム3枚分で18万ドルという破格の契約を勝ち取ります。

プロのレコーディング・スタジオ(カリフォルニア州のレコード・プラント)に入ったプリンスは、ワーナー側を安心させるためにベテランのトミー・ヴィカーリをエグゼクティブ・プロデューサーに迎えるという形をとりました。しかしそれはあくまで口実であり、実際にはプロデュースからアレンジ、全ての楽器演奏、バック・ボーカルに至るまでを完全に一人でこなし、たった一人でこの驚異的なデビュー作を作り上げました。

楽曲について

天才と呼ばれるにふさわしい、荒削りながらも底知れぬ才能が詰め込まれたダンス・アルバムです。
当時の流行だったディスコ・サウンドやR&Bを素直に取り入れつつも、のちの「ミネアポリス・サウンド」へと繋がるシンセサイザーの多用や、幾重にも重なる美しいファルセット・コーラスなど、プリンスならではの個性がすでに随所で光っています。若き日の彼が持つピュアな情熱と、「自分はこれだけできるんだ」という野心が、瑞々しいサウンドから溢れ出しています。

For You

約1分という短さながら、聴く者を一気に引き込むアカペラのタイトル・トラックです。幾重にも折り重なるプリンスの柔らかなファルセット・コーラスが美しく、これから始まる偉大なキャリアを祝福するかのような荘厳な響きを持っています。すべてはあなたのために、という誠実なメッセージが込められています。

In Love

当時のディスコ・サウンドの空気をたっぷり吸い込んだ、明るくポップなダンス・ナンバーです。軽快なリズムに乗せて、恋の喜びを歌う伸びやかなファルセットと、ところどころで唸るようなボーカルの節回しが印象的。アルバムの中で最初に楽器の音が鳴り響く、実質的なオープニング曲とも言える存在です。

Soft And Wet

記念すべきデビュー・シングルであり、のちにMCハマーがカヴァーしたことでも知られる名曲です。弾けるようなシンセ・ベースとタイトなリズムが心地よく、すでにプリンス独特のファンク・サウンドの片鱗が窺えます。初々しくも少しエロティックな歌詞は、クリス・ムーンとの共作によるものです。

Crazy You

キラキラとしたシンセサイザーの音色と、優しいアコースティック・ギターの弾き語りが絶妙に溶け合った、心地よいアコースティック・ナンバー。激しいダンス曲の間に挟まれたオアシスのような存在で、プリンスのメロディメーカーとしての引き出しの多さを感じさせます。

Just As Long As We're Together

ファンキーでスピード感あふれる、グルーヴ感満点の2ndシングルです。もともとインストゥルメンタル曲として作られていた後半のジャム・セッション部分では、ドラム、ベース、ギター、キーボードと、次々に楽器が重なっていく展開がスリリング。彼のマルチプレイヤーとしての圧倒的な演奏力が堪能できます。

Baby

予期せぬ妊娠をテーマにした、ドラマティックで美しいバラードです。生のストリングスの代わりにシンセサイザーを中心にしたアレンジが施されており、切なくもエロかっこいいファルセット・ボイスが胸に迫ります。のちのプリンス・バラードの原型とも言える、完成度の高い1曲です。

My Love Is Forever

再びディスコ・サウンドを踏襲した、どこまでも明るくキャッチーなダンス・ナンバーです。弾むようなベースラインと華やかなメロディラインが印象的で、当時のブラック・ミュージックのトレンドをしっかりと押さえつつ、彼らしいポップな味付けが施されています。

So Blue

ジョニ・ミッチェルのアルバムにインスパイアされたと言われる、少しジャジーでメランコリックなスロー・ナンバーです。アコースティックな質感と、しっとりと歌い上げるプリンスのボーカルが、アルバムに深みを与えています。彼の幅広い音楽的ルーツを感じさせる、隠れた名曲です。

I'm Yours

アルバムの最後を飾るのは、うねるようなベースとハードなギター・リフが炸裂するロック・ナンバー。ここまでソウルやディスコを中心に聴かせてきた彼が、最後に「ギタリスト・プリンス」としての野性的な才能を見せつけます。ファンクとロックの融合という、今後の方向性を強く予感させるエンディングです。

セールスなど

リリース当時は全米ビルボードのポップ・チャートで最高163位、R&Bチャートでは21位と、メガヒットには至りませんでした。ツアーを行うためのバック・バンドがまだ未熟だと判断され、プロモーション・ツアーができなかったことも影響しています。当時のマネージャーによれば、売り上げは約15万〜20万枚程度だったと言われています。

日本では、次作『愛のペガサス』が実質的なデビュー作として紹介されたため、本作は『Purple Rain』が大ヒットしたあとの1984年10月にようやくリリースされました。そのため、日本でのリアルタイムの衝撃は少なく、「もしこれが最初に紹介されていたら」と想像するファンも少なくありません。

トリビア

重役たちの前でのワンマン・ショー

ワーナー・ブラザースと契約する際、プリンスはレコード会社の重役たちの前で「Just As Long As We're Together」を一から録音し、全楽器を一人で演奏して見せることで自身の才能を証明しました。

契約パーティでの意味深な楽曲

余談ですが、ワーナーは契約を祝うためのパーティを1977年6月25日に開催しました。重役と話すのが苦手なプリンスに対し、デヴィッド・Zはパーティ用の曲を作る事を提案。プリンスは両者の関係を恋心に置き換えて書いた「I Hope We Work It Out」を披露しましたが、そのラストは爆発音で幕を閉じるという、のちの関係を暗示する様な楽曲でした。

はじまりと終わりを結ぶ「運命」の曲

1997年11月、オフィシャルサイト「Love4OneAnother.com」で行われたインタビューでの一コマ。インタビュアーからこんな興味深い質問が投げかけられました。
「ワーナー・ブラザーズから最初にリリースされた曲が「For You」で、最後にリリースされた曲が「Had U」というのは、なんだか面白いと思いませんか? それは計画されていたものですか、それ運命ですか?」
これに対し、プリンスは一言、こう返しています。「運命さ(Fate)」

パトリース・ラッシェンのサポート

「Baby」のオーケストラ・アレンジについて、当時プリンスが敬愛していたパトリース・ラッシェンに電話でアドバイスを求めました。彼女は実際に演奏はしていませんが、譜面の書き方などをレクチャーしています。

At the time, Prince was in the process of recording his debut LP For You and, evidently taken with the sound of Rushen’s records, he’d call her to ask questions about her recording process.
当時、プリンスはデビューアルバム『フォー・ユー』を録音中で、ラッシェンのレコードの音に惚れ込んだプリンスは、彼女に電話をかけてはレコーディングのプロセスについて質問していた。

“How’d you get that sound?,” Rushen remembers him asking, adopting his dulcet tone.
「どうやったらあの音が出るんだい?」と、ラッシェンはプリンスの優しい口調を真似ながら語りました。

Soon, he’d enlist her help writing the strings for his song “Baby.” “He already knew what he wanted, but at that point didn’t know how to write it down.”
やがてプリンスは、自分の曲 "Baby "のストリングスを書くのにラッシェンの助けを求めました。「彼(プリンス)は自分が何をしたいのかわかっていたけれど、それをどう書けばいいのかわからなかったのよ」。

Patrice Rushen’s “Straight From The Heart” Still Shines 40 Years Later | Bandcamp Daily
Patrice Rushen’s “Straight From The Heart” Still Shines 40 Years Later | Bandcamp Daily

daily.bandcamp.com

ストリングスの変更

「Baby」の初期録音では、地元ミネアポリスのオーケストラを起用して生のストリングスを録音しましたが、結果が気に入らず、最終的にシンセサイザーのストリングスに差し替えられました。

ミネソタ歴史協会に寄贈されたデモテープ

2018年、当時マネージメントを担当していたオーウェン・ハスニー(オーウェン・ハズニー)はデビューに向けて制作したデモテープをミネソタ歴史協会に寄贈しました。

参考オーウェン・ハスニーがミネソタ歴史協会にプリンスの初期音源を寄贈

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