グッド・フイーリング / ブラウンマーク
Released:1989/9/19 | Label: Motown
Track List
- Bang Bang (4:57) P
- Shall We Dance (4:41) P
- Through A Friend Of Mine (4:58)
- Good Feeling (4:09)
- My Heart Misses (4:07)
- It’s Not The Way (3:24)
- Luv Touch (4:24)
- Cruisin’ (4:51)
- Between You And Me (5:25)
- Let’s Go All The Way (3:27)
- Distress Signal (4:04)
Personnel
Produce, Arranged, Composed
- Brownmark (3,4,6-9,11)
- Brownmark,Stan Sheppard and
- Jimmy Varner (5,10)
- Levi Seacer,Jr. (1,2)
Written
- Levi Seacer,Jr. (1)
- Prince (2)
- Brownmark(4,6,7,8)
- Brownmark, Levi Seacer,Jr., Robin
- Johnson, Kim Perry(3)
- Brownmark, Stan Sheppard and Jimmy Varner (5,10)
- Brownmark, Levi Seacer,Jr., Kim Perry(9)
- Brownmark,Chris Boone(11)
Musician
- Brownmark (vocals, bass, all other instruments)
- Prince (vocals) (1,2)
- Levi Seacer, Jr. (all instruments, vocal) (1,2,3)
- Margie Cox (vocals) (1)
- Gwen Matthews (vocals) (3,4,6,7)
- Jason Cameron (guitar) (4)
- Mary Jane Aim (vocals) (4,6,7)
- Jimmy Varner (kyebords) (5,10)
- Steve Wright (trumpet) (6)
- Maxine, Julia and Oren Waters (vocals) (7,11)
- Demetrius Harvey, Portia Griffith and Valerie Pinkston (vocal) (8)
- IROC (trumpet scratch) (9)
- Yvette Brown (vocal) (9)
アルバム・レビュー
アルバム制作の経緯とプロデューサー陣
ザ・レヴォリューションを支えたベーシスト、ブラウンマークがバンド解散後にモータウンと契約し、セルフ・プロデュースで挑んだデビュー作『Just Like That』(1988年)から約1年。1989年にリリースされたソロ第2作が本作です。
ほぼ独力で作り上げた前作に対し、本作では外部のソングライターやプロデューサーを積極的に迎え入れているのが大きな特徴です。その筆頭が、当時プリンスのバンド内で頭角を現し、後にニュー・パワー・ジェネレーション(NPG)のベーシストとなるリーヴァイ・シーサー,Jr.でした。
プリンスの歴代バンドを支えた新旧ベーシスト同士の共闘に加え、ペイズリー・パーク・スタジオでのセッションを通じてプリンス本人も楽曲制作やバック・ボーカルで参加。バンド脱退時は半ば喧嘩別れだったので、このコラボは嬉しい誤算でした。
さらに、バイ・オール・ミーンズのジミー・バーナーと、敏腕プロデューサーのスタン・シェパードのチームも制作に合流。ミネアポリス直系のファンクネスと、モータウンらしい洗練されたアーバン/R&Bがバランスよくブレンドされた布陣となっています。
楽曲について
開幕曲の「Bang Bang」から、続く「Shall We Dance」へと雪崩れ込む冒頭2曲の流れは、プリンス・ファンなら耳を奪われる本作のハイライトです。
先行シングルにもなった「Bang Bang」は、リーヴァイ・シーサー,Jr.が手掛けたファンク・チューンで、プリンスがバック・ボーカルで参加しています。直情的なビートとスラップを効かせた骨太なベース・ラインは、同時期にプリンスが温めていた『Graffiti Bridge』収録の「Tick, Tick, Bang」のグルーヴを想起させます。一転してプリンス自身が書き下ろした「Shall We Dance」は、『Lovesexy』の熱気を受け継いだような疾走感あふれるダンス・トラック。プリンスが演奏したファンキーなバッキングに乗せて、ブラウンマークが力強いボーカルを聴かせてくれます。同じくリーヴァイがプロデュースしたシングル曲「Through A Friend Of Mine」も含め、アルバム前半では当時のペイズリー・パーク特有のタイトでキレのあるファンク・サウンドが存分に楽しめます。
その一方で、同じベーシストでありながら、リーヴァイの直線的でエッジの効いたプレイに対し、ブラウンマーク自身がプロデュースしたタイトル曲「Good Feeling」では、どっしりと重心の低い、堅実でカッチリとしたベース・ワークを披露しており、二人のアプローチの違いを聴き比べるのも面白いです。
アルバム後半では、ジミー・バーナーとスタン・シェパードを迎えた共同プロデュース曲「My Heart Misses」や「Let's Go All The Way」といったメロウなバラードが光ります。前作にはなかったしなやかな歌心と大人のソウル・ミュージックとしての落ち着きが加わったことで、アルバム全体の表情がぐっと豊かになりました。
独力でやれることの限界を見極め、信頼できる仲間の力を借りて自身の音楽的キャパシティを広げたという意味で、ブラウンマークのシンガー/ミュージシャンとしての柔軟性がよく表れたアルバムです。
プリンス関与曲と制作の舞台裏
プリンスが制作に関与した楽曲は2曲はいずれも1989年初頭、ペイズリー・パーク・スタジオにて録音されました。このセッションには、当時のプリンスの実験的なサウンド・メイキングが色濃く反映されています。
Bang Bang
- 作詞・作曲・プロデュースはリーヴァイ・シーサー,Jr.が担当。プリンスはノンクレジットでバック・ボーカルとしてのみ参加しています。
- 1989年初頭にペイズリー・パーク・スタジオで録音されたと見られています。リーヴァイのペンによる楽曲ですが、エネルギッシュなファンク・グルーヴやコーラスの掛け合いには、当時のプリンス・ファミリー直系の空気感が濃厚に漂っています。
- 本作のミュージック・ビデオでブラウンマークが手にしているのは、ドイツの製作家ジェリー・オーズワルド(Jerry Auerswald)による銘器「Model C」ベースです。このベースは、同年の映画『Batman』(「Partyman」のMVなど)や、後年の『Welcome 2 America』のジャケット写真・セッションでもプリンス本人が愛用したことで知られる象徴的な楽器です。バンドを離れた後も、プリンスの貴重なカスタム・ベースを借りて撮影に臨んでいた(あるいはペイズリー・パークの楽器群を共有していた)点に、二人の確かな絆と当時のスタジオの親密な空気が垣間見えます。
Shall We Danc
作詞・作曲およびインストゥルメンツの演奏はプリンス、プロデュースはリーヴァイ・シーサー,Jr.名義。Vaultのマスターテープには「1989年1月2日」の日付が記録されています。プリンスが自身のリード&バッキング・ボーカルを含めて完成させたトラックをもとに、ブラウンマークがボーカルを差し替えてリリースされました。
当時エンジニアを務めていたチャック・ズウィッキーが2016年にfacebookで明かした回想によると、この曲のユニークなサウンドには偶然の産物とも言える裏話がありました。
- スタジオAのセットアップ中、ズウィッキーが持ち込んで聴いていたクラシックのCD(ドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』と、ロバート・ショウ指揮アトランタ交響楽団によるストラヴィンスキーの『火の鳥』)にプリンスが興味を示しました。
- リズムマシン(Linn LM-1)とE-mu EIIIサンプラーのベースを録音し、歌詞を書き留めて仮歌を入れた後、プリンスはそのクラシック音源をフランス製の高級サンプラー「パブリゾン(Publison)」に取り込むことを提案。
- ズウィッキーが『火の鳥』のピチカート/木琴のモチーフをバスドラム(キック)に連動させてトリガーし(これは映画『Batman』の「Batdance」などで多用された手法です)、イントロや第2ヴァースのフックとして配置。さらにドビュッシーのフルートの旋律を、MIDIコントローラーとして接続したRoland D-50を使ってプリンス自らが手弾きで演奏・サンプリングしました。
クラシックのサンプリングは単発に終わらず、ドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』は後に『Graffiti Bridge』に収録される「Still Would Stand All Time」に再利用され、『火の鳥』のフレーズも数年後に「Loose!」のリミックスで再びサンプリングされることになります。
