最高裁判所がアンディ・ウォーホルによるプリンス・シリーズを著作権侵害であると判決を下す

アメリカの最高裁は現地時間の2023年5月18日、アンディ・ウォーホルがプリンスの写真をもとに作成したシルクスクリーン、通称〈オレンジ・プリンス〉に対して写真家の著作権を侵害したとの判決を下しました。

オレンジ・プリンスについて

今回の判決に関して簡単にまとめてみました。

1984年の紙面を飾る為にウォーホルが制作

オレンジ・プリンスは、1984年11月号の『ヴァニティ・フェア (Vanity Fair)』に使うため発行元のコンデナスト・パブリケーションズからアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)に依頼されたもので、写真家のリン・ゴールドスミス(Lynn Goldsmith)が撮影した写真をベースに制作されました。

https://archive.vanityfair.com/article/1984/11/purple-fame

ヴァニティ・フェアは制作に際しゴールドスミスからアートとして使用する権利を取得し、紙面にも彼女の名前がクレジットされていたそうです。

シリーズに関してはウォーホルが了承を得ず制作

その後、ウォーホルはゴールドスミスの写真をベースにさらに15枚のアート〈オレンジ・プリンス〉を制作しますが、これに関してはゴールドスミス、ヴァニティ・フェア、コンデナスト・パブリケーションズ、そしてプリンス本人から依頼されたものではありませんでした。

https://edition.cnn.com/2023/05/18/politics/supreme-court-prince-andy-warhol/index.html

2016年にシリーズの存在を知るゴールドスミス

プリンスがこの世を去った2016年、コンデナスト・パブリケーションズは〈プリンス・シリーズ〉を表紙に採用した記念誌を出版しますが、ここにゴールドスミスの名はクレジットされず、この時初めてゴールドスミスはシリーズの存在を知ったと主張。
無断で使用した事に対して著作権を侵害していると考えたゴールドスミスはウォーホルの財団を訴え、18日の最高裁の判決で7対2でゴールドスミスが勝訴しました。

 

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下は判決内容

判事の言葉

最高裁判所によれば、ウォーホル財団が主張する「一定の条件を満たしていれば、著作権者から許可を得なくても、著作物を再利用できる」とされる”フェアユース(fair-use)”に該当するほど変容的(transformative)なものではないと結論に達し、ソニア・ソトマイヨール判事は以下のように述べました。

“Goldsmith’s original works, like those of other photographers, are entitled to copyright protection, even against famous artists,”

「ゴールドスミスのオリジナル作品は、他の写真家の作品と同様に、有名なアーティストに対しても著作権による保護を受ける権利がある」

プリンスの公式アカウントでもゴールドスミスを支持

プリンスの公式Twitterでも今回の判決を受け「今日、注目を集めた最高裁判決の判決がありました。1981年にプリンスの象徴的なポートレートを撮影した写真家リン・ゴールドスミスの主張を認めました。」とツィートしました。

Prince was the subject of a high-profile Supreme Court ruling today. The court sided with photographer Lynn Goldsmith, who took an iconic portrait of Prince in 1981 that Andy Warhol then used to create his own images of Prince in 1984.

“Lynn Goldsmith’s original works, like… pic.twitter.com/wOOn5MFdQQ

— Prince (@prince) May 18, 2023

今後のアート作品に影響を及ぼす判決

今回の判決は写真家の権利を守ると同時に”変容”の解釈が問われるものとして注目が集まっていました。この結果を受け、今後似たように利益を生んでいる変容が認められないアート作品に対して訴訟が起こりそうですね。

ウォーホルを擁護するならば...

今となっては確認のしようがありませんが、15枚の絵は線画なども含まれてる事からウォーホル自身は”失敗作”として永遠に世に出すつもりはなかったのかもしれません。
ウォーホルの思いを汲み取れず財団が勝手に掘り出した結果この様な判決に至ったのであれば、ウォーホルの価値を落としたとして彼が財団を訴えたいでしょうね。

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