「Diamonds & Pearls」の収録曲"Gett Off"は色んな楽曲のサンプルとして使われている1曲で、冒頭のシャウト(声の主はロージー・ゲインズ)代表的な曲として、ハウス・オブ・ペインが翌年リリースした"Jump Around"が取り上げられる事が多い曲でした。
ところが、この曲の元ネタは別の曲という話もあります。
2016年5月16日、この謎にNewsweekのライターが挑んでいるので概要を抜粋して紹介します。
プリンスの「Gett Off」とヒップホップの象徴的なサンプルの24年にわたるミステリー
https://www.newsweek.com/princes-gett-and-24-year-mystery-hip-hop-sample-456856
www.newsweek.com
プリンスではなくジュニア・ウォーカー?!
"Jump Around"はボブ&アール(Bob and Earl)の"Harlem Shuffle"やローウェル・フルスン(Lowell Fulsome)の"Tramp"など多くの楽曲をサンプリングしています。
問題のシャウトに関してはプリンスのフォロワーでもあるクエストラヴが過去に"Gett Off"と発言していますが、”公式”ではジュニア・ウォーカー・アンド・ザ・オール・スターズ(Junior Walker and the All Stars)が1967年に発表した"Shoot Your Shot"のサックスの音色だそうです。
"Gett Off"と聴き比べると判りますがかなり似ていて、過去にprince.orgでも議論されています。
which songs contain prince samples?
prince.org
ライターのザック氏はハウス・オブ・ペインのフロントマン、エバーラストの広報やプロデューサーのDJマグスに連絡を取りますが回答を得られませんでした。
上記のorgなど、色々調べたどり着いたのはDJ Funktual氏がやっているYouTube動画。
この動画では"Shoot Your Shot"をスロー再生し、元ネタとなったチャビー・チェッカー(Chubby Checker)の”Popeye”をスロー再生しミックスし"Jump Around"を再現しています。
これで決着が付いたかと思われましたが、新たな証言が浮上します。
アニエル・ダッシュ氏&クエストラヴの一発
プリンスの研究家で起業家でもあるアニル・ダッシュ(Anil Dash)によれば、あれは"Gett Off"で彼らはライセンス料を支払うのを恐れて否定してると推察しています。
@zzzzaaaacccchhh it is indeed! Though I think they’ve tried to deny it for fear of having to pay licensing.
— Anil (@anildash) May 3, 2016
アニエル氏によれば、クエストラヴは"Gett Off"のスクリームを使いながら"Jump Around"を流している事を聴いた事があるそうで、クエストラヴ本人もザック氏の質問に回答しています。
That's Gett Off: trust I know https://t.co/p3m2D4xHuQ
— Dr. Love (@questlove) April 26, 2016
逆転の一発
クエストラヴの一打が決定打となって決着が付くかと思われましたが後日談でまた一波乱ありました。
一連の記事は話題となり、ザック氏の元にはプリンス説とジュニア・ウォーカー説それぞれの意見が多数寄せられました。
その中で、ピーター・リード氏が"Shoot Your Shot" と "Gett Off" と比較したサンプルの音波を分析したスペクトログラムを3枚送ってきました。
これによれば、ジュニア・ウォーカーのサンプルのわずかな揺れは、2か所ではっきりとした "squareness (直角) "を示していて、それが”Jump Around”に完全に対応していると逆転打を放ちました。
満を持して真打ち登場
記事が出て2日後となる5月18日、エバーラストがクエストラヴの投稿に対し"there is absolutely no prince sample in jump around,("Jump Around"にプリンスのサンプリングは一切ない)"と反論。
btw there is absolutely no prince sample in jump around. Way off. It's a horn FYI.
— Mr. Whitefolks (@OGEverlast) May 17, 2016
決定だと思われたが...
エバーラストが長い沈黙を破って発言した事で決着した...と思われますが、クエストラヴは諦めてないようで、謝る事もなくウィンクを返しています。
*wink* https://t.co/biSm6ktKj3
— Dr. Love (@questlove) May 18, 2016
結論
この結果に対し、ザック氏は”As for me? I've decided to accept the mystery.(私?私は謎を受け入れることにしました。)”で締めくくり、結論は出ず仕舞いという顛末でした。
明確なデータ、そしてエバーラストの証言からすれば、ジュニア・ウォーカーで間違いないと思いますが、"Gett Off"を使ったDJ Bizznizzによるリミックスもある事から、もしかすると未発表に存在するとか...謎は謎のままにしておいた方が面白いのかもしれませんね。