プリンスの「Welcome 2 America」デラックス・エディションに同梱されたライブでも素晴らしいヴォーカルを披露したレディシー(レデシーと表記も)が、ニーナ・シモンのトリビュート・アルバム「Ledisi Sings Nina」をリリースしました。
Ledisi Sings Nina
Track List
- Feeling Good
- My Baby Just Cares for Me
- Ne Me Quitte Pas (Don't Leave Me)
- Wild Is The Wind (Live)
- Work Song
- Four Women
- I'm Going Back Home
レディシーについて
ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれでオークランド育ち。
バンド活動を経て’00年に自身のレーベル〈LeSun Records〉からアルバム「Soulsinger」でデビュー、’02年にリリースした2作目の「Feeling Orange but Sometimes Blue」が翌年開催されたカリフォルニア・ミュージック・アワードの”Outstanding Jazz Album”を受賞した事で注目を浴びます。
メジャー・レーベルに移籍し’07年にリリースした3作目「Lost & Found」がグラミー賞の最優秀新人賞にノミネートして以降、数多くの音楽賞で評価されました。
ます。
NPGのバック・ヴォーカリストとして不定期参加
プリンスとは2008年の『The Tonight Show With Jay Leno』にシェルビーやマーヴァと一緒にバック・ヴォーカリストとして参加。
参考「The Tonight Show with Jay Leno」で新曲"Turn Me Loose"を披露
コーチェラ・フェスティバルの前日となる2008年4月25日、ジェイ・レノ・ショウで新曲"Turn Me Loose"を披露しました。 https://uploadstars.com/video/9R1 ...
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その後も2011年~2012年のツアーに不定期に参加。当時収録された”Big City”は2016年の「Hitnrun Phase Two」に収録されました。
アルバム・レビュー
2020年の「The Wild Card」に次いでリリースされた本作は、歌手・ピアニストであり公民権活動家、市民運動家という側面も持つ偉大なるニーナ・シモンのトリビュート・アルバムです。
ニューヨーク・タイムスでのインタビューによると、レディシーがニーナを知ったのは2作目の録音を終えた2003年。当時の彼女は離婚したばかりで請求書の山に住んでる場所も自分にも嫌になり、"OK. This is the day. I’m going to leave this earth. (よし、今日はこの日だ。私はこの地上を去るわ)”と自殺を考えていました。その時ラジオからニーナの"Trouble in Mind"が流れてきました。
トラブルがあっても前を向いて飛び出そうという歌を聴いた彼女は、ただ泣いて泣いて、曲が流れ続けるうちに気分が良くなって、自分が生き続けることを確信したたそうです。
彼女がこう思ったのが何月か不明ですがニーナはこの年の4月21日にこの世を去りました。もしかするとニーナが生かしてくれたのかもしれません。
命の恩人とも言うべきニーナの作品を探求すると、近年トリビュート・コンサートも開催し、2020年12月には『Ledisi Live: A Tribute To Nina Simone』という特番も放送されました。
その集大成として記念すべき通算10作目にこのアルバムをリリースしました。
彼女を支えるのはジュールス・バックリー指揮によるメトロポール・オーケストラ、”I’m Going Back Home”ではアドニス・ローズ指揮によるニューオーリンズ・ジャズ・オーケストラが演奏しています。
オープニングを飾る”Feeling Good”の第一声から鳥肌が立ちました。ニーナよりも少し高めの音粋ですが円熟味を増し奥行きのあるヴォーカルに只々吸い込まれ、20秒過ぎからオーケストラが徐々に盛り上げていきます。
続く”My Baby Just Cares for Me”はスウィング・ジャズ風、静かな冒頭から徐々に高揚していく”Ne Me Quitte Pas (Don't Leave Me)”は聴いていて思わず涙が出てきます。
↓は2019年にロイヤル・アルバート・ホールでのパフォーマンス。
後半は前述の『Ledisi Live: A Tribute To Nina Simone』で演奏されたスパニッシュ・ギター、ピアノ、ドラムによるライブ・テイクが収録の"Wild Is The Wind"、ドラマティックな"Work Song"、題名通りリズ・ライト(Lizz Wright)、アリス・スミス(lice Smith)、リサ・フィッシャー(Lisa Fisher)の3人を迎えた”Four Women”、ラストは生まれ故郷のニューオリンズ・ジャズの”I'm Going Back Home”で幕を閉じます。
曲数的には7曲と少々物足りない感じがしますが、聴き終わった頃には大満足のアルバムです。
YouTube
下記の公式チャンネルで全曲聴くことができます。
ニーナ・シモンのオリジナルと聴き比べるのも楽しいのでプレイリストを貼っておきます。
ニーナ・シモンによるプリンスのカヴァー
ニーナ・シモンといえば、2008年に再販された「A Single Woman Expanded version」(オリジナルは'93年)に"Sign O' The Times"のカヴァーが収録されています。
レディシーは’08年に行われたプリンスのライブでニーナの”In The Morning”をカヴァー。
ニーナはプリンスの曲をカヴァー、そして4月21日という日。何か運命的な事を感じました。
Ledisi Live at the Troubadour
2021年4月にリリースしたライブ盤も素晴らしいのでこちらも是非一聴を。