カラー・オブ・サクセス / モーリス・デイ
Released:1985/9/11 | Label: Warner Bros.
Track List
- (Intro: Somewhere Over The Rainbow) (0:11)
Color Of Success (5:10) - The Character (4:07)
- The Oak Tree (7:22)
- Love Sign (6:22)
- Don't Wait For Me (7:12)
- Love / Addiction (5:10)
Personnel
Produce, Arranged, Written
- Morris Day
Musician
- Morris Day (Vocal, Synthesizer, Drums, Percussion)
- Steve Mitchell (Synthesizer, Drum Programming)
- Howie Rice (Guitar, Synthesizer)
- Larry Dunn, Morris Day, Ricky "Freeze" Smith (Synthesizer)
- Horace Bokie Coleman Jr., Howie Rice, Roland Bautista, Tony Berg (Guitar)
- Greg Phillinganes (Piano)
- Angie Johnson, Bunny Hull, Clydene Jackson, Kit Hain, Mary Bridges, Maxayne Lewis, Mimi Brodsky, Sharon Robinson (Background Vocal)
アルバム・レビュー
'84年に公開されたプリンス主演の映画『パープル・レイン』でライバルとして人気を博したモーリス。
ザ・タイムの3作目「Ice Cream Castle」もR&Bチャート3位と好成績を残しますが、どんなに脚光を浴びても”プリンスの傀儡バンド”と言われる事に不満を持ったモーリスは、プリンスのもとを離れ独立する事を計画。メンバーだったジャム&ルイスやジェシー・ジョンソンに対する仕打ちを間近に見ていたモーリスは、誰にも知られないようプリンス関連アーティストを一切起用せず遠く離れたロサンゼルスでアルバム制作を進めます。
事実が明るみになったのは『パープル・レイン』のプロモーションを行っていた1984年夏頃に行われたデヴィッド・レターマンがホストを務めるTVのインタビューで、モーリスの口から「I’m getting ready to go in the studio and do the Morris Day album」とソロ・アルバムを制作中である事を述べ、プリンスと今後も仕事をするかと問われると「I mean, I’m not against it, but I don’t think so.」と袂を分かつ事を話しました。
プリンスとモーリスは映画のクランクアップの頃には既にバンドとして修復不可能な状態に陥っていたものの、この発言はファンは勿論プリンスもショックだったかもしれません。
プリンスのもとを離れミネアポリスからロサンゼルスのサンタモニカに引っ越し、ワーナーとソロ契約を果たすとバンド解散の1年後に念願のソロ・デビューを果たしました。
アルバムはプリンスに対抗するべく作詞作曲プロデュースを全て担当。ミュージシャンにはフィリップ・ベイリーやハーブ・アルバート等のアレンジを担当したスティーヴ・ミッチェルやパティ・ラベルのアルバムでのプロデュース経験もあるハウイ・ライス、ザ・ウィスパーズのアルバムを担当し後年ザ・タイムの再結成でも手腕を振るうリッキー”フリーズ”スミス、EW&Fに在籍していたラリー・ダン等、単なるプレイヤーではなく経験豊かなアーティストが参加しています。
ワーナーに多大な出費(モーリスをプリンスとの契約から解放するのに30万ドルかかったと言われています)をさせた身としては、ザ・タイムに並ぶヒットが至上命題。ファンにとってもミネアポリス・サウンドを踏襲するのが成功の近道で、モーリス自身も”ミネアポリス・サウンドの成功は俺の努力も少なからずある”という自負はあったでしょうが大成功を収めたプリンスの後では二番煎じと言われてしまうのも事実。その状況を上手く消化し絶妙なバランスで制作されました。
”The Bird”を彷彿させるミネアポリス・サウンドとモーリス独特の明るいキャラクターが見事に融合したデビュー・シングルの"The Oak Tree"を筆頭に、シンプルな打ち込みながらモーリスのクールな一面をみせるオープニングに相応しい"Color of Success"、内省的な歌詞が印象的な"The Character"、思うような成績を残せなかったもののエッジの効いたギター・リフが心地よい"Love Sign"など、ファンの期待を裏切らないシングル曲の他、7分超のバラード・ナンバー"Don't Wait For Me"やミディアム・スローの”Love / Addiction”も秀逸。
ザ・タイム時代と同じ6曲という構成はシンプルで聴きやすくバランスも良くR&Bチャート7位と好成績をマークしますが、やはりプリンスの影を払拭する事は出来なかったと言えます。
Oak Treeをいじるプリンス
モーリスに離反されたプリンスの怒りは相当なもので、ザ・タイムの後発バンドとして生まれたザ・ファミリーのアルバムに収録された”反乱”という意味の”Mutiny”で牽制。さらにシーラ・Eの「Romance 1600」のビデオに収録された”A Love Bizarre”のパフォーマンスでプリンスは“Jerome, somebody told me they got a new dance here! (ジェローム、誰かが新しいダンスがあるって言ってたぜ!)”と盟友のジェロームに”The Oak Tree”のダンスを踊させると、続けて“I’mma chop that oak tree down this evening and make a wooden leg out of it.(今晩、あの樫の木[オーク・ツリー]を切り倒して、木の脚を作るんだ)”と命じ、ダンスするよう命じるというシーンは憎悪と悲しさが入り混じったフォーマンスで見ていて辛いものでした。