アルバム情報
Released:2014/9/30 | Label: NPG Records, Warner Bros.
Track List
- Wow (4:27)
- Pretzelbodylogic (3:26)
- Aintturninround (3:01)
- Plectrumelectrum (4:51)
- Whitecaps (3:42)
- Fixurlifeup (3:12)
- Boytrouble (3:52)
- Stopthistrain (3:40)
- Anotherlove (4:15)
- Tictactoe (3:37)
- Marz (1:48)
- Funknroll (4:09)
Personnel
Produce, Arranged, Composed
- Prince & 3rdeyegirl
Written
- Prince and 3rdEyeGirl (1-4,5-8,10-12)
- Donna Grantis(4)
- Alice Smith(9)
Mixer
- Joshua Welton
- Chris James
- Ben Muhlethaler
- Jamie Lewis
Member
- Hannah Welton Ford (Drums) (Vocals) (2,3,5,8) (Back Vo) (6,7,9)
- Ida Nielsen (Bass) (Vocals) (2) (Back Vo) (5,9)
- Donna Grantis (Guitar) (Vocals) (2) (Back Vo) (5,9)
Additional Musician
- Lizzo (Rap) (7)
- Sophia Eris (Rap) (7)
- Joshua Welton (Background vocals) (8)
Cover
- "Another Love" by Alice Smith (2013) (9)
Sampled
- "Elektra" by Donna Grantis Electric Band (2012) (2)
アルバム・レビュー
アルバム・リリースまでの動き
2010年代に入り長期間のツアーを終えたプリンスは、新しいバンドの結成に向けて動き出します。彼が集めたのは、確かな実力を持った3人の女性プレイヤーでした。
3人の加入時期はそれぞれ異なります。ベースのイダ・ニールセン(イーダと記載される場合も)は、2010年頃からジョシュ・ダンハムに代わってNPG(ニュー・パワー・ジェネレーション)のメンバーとして活躍しており、3人の中では一番の古株です。「Bassida」とも呼ばれるイダは、あのロンダ・スミスにも負けず劣らずのベーシストで、楽器メーカー「TC Electronic」の広告塔としても活躍。2011年には『Sometimes a girl needs some sugar too』というソロ・アルバムもリリースしています。
ドラムのハンナ・フォードは、2012年頃にプリンスに見初められてバンドに参加。彼女は本作でプリンスと共にプロデュースを担当したエンジニアであり、キーボード奏者でもあるジョシュア・ウェルトンと2014年に結婚しました。
ギターのダナ・グランティス(ドナと記載される場合も)は、プリンスからの「女性ギタリストを探してほしい」という要請を受けたハンナたちが見つけ出し、見事プリンスのオーディションに合格したシンデレラ・ガールです。彼女もまた、2012年に自身の「Donna Grantis Electric Band」名義で『Suites』というアルバムをリリースしている実力派でした。
プリンスはこの3人に〈3rdEyeGirl〉というグループ名を授け、2013年に入るとSNSや特設サイトを次々と立ち上げます。新曲の配信や北米ツアーを精力的に展開し、ペイズリー・パーク・スタジオなどでジャム・セッションを重ねて作り上げた本作は、2014年9月、古巣ワーナー・ブラザースとの劇的な再契約を経て、自身のソロ作『ART OFFICIAL AGE』と2枚同時リリースされることになります。
楽曲について
同時リリースされた『ART OFFICIAL AGE』がR&Bやエレクトロを取り入れたモダンなサウンドだとすれば、本作はライブバンドとしてのエネルギーが爆発した、ストレートでパワフルなファンク・ロック・アルバムです。
プリンスはあえてバンドの一員として少し引いた立ち位置を楽しみつつ、サードアイガールのしなやかで骨太なグルーヴを前面に押し出しています。スタジオの熱気がそのままスピーカーから飛び出してくるような、生演奏のダイナミズムとロックンロールの初期衝動に満ちた1枚です。
Wow
同年リリースされたリヴ・ウォーフィールドのアルバムにプリンスが提供したタイトル曲のセルフ・カヴァーです。R&Bテイストだったリヴのバージョンに対し、こちらは重厚なギターが唸りを上げるドラマティックなロッカ・バラードへと変貌しており、両者を聴き比べるのも楽しい1曲です。
Pretzelbodylogic
先行シングルとしてリリースされた、ファンク・ロック・ナンバー。重いギターリフに乗せて3人のボーカルも加わり、バンドの力強い自己紹介のような勢いを持っています。圧倒的なグルーヴ感で、オープニングの勢いをさらに加速させます。
Aintturninround
ドラムのハンナがメイン・ボーカルを務めるハード・ロック・チューン。プリンスらしいスピリチュアルなメッセージと、アグレッシブに攻めるバンド・サウンドが見事に融合しており、聴く者のボルテージを一気に引き上げてくれます。
Plectrumelectrum
ダナが加入前に自身のバンドで発表していたインスト曲を、プリンス流のアレンジで再構築したタイトル・トラックです。メンバー全員の卓越したテクニックと、歌うようなプリンスのギターが堪能できます。ダナへの深いリスペクトが感じられる名演です。
Whitecaps
ハンナの優しく透き通ったリード・ボーカルが印象的な、美しい失恋ソングです。ハードなロック・サウンドが続く中で、メロディアスでメランコリックな旋律が際立ち、アルバムの中に心地よいオアシスのような空間を作り出しています。
Fixurlifeup
音楽業界における女性の立場や社会問題に鋭く切り込んだメッセージ・ソング。2013年のツアー時から披露されていた初期の代表曲であり、ガールズ・バンドと共にロックを鳴らすプリンスならではの、力強い応援歌になっています。
Boytrouble
リゾやソフィア・エリスといったミネアポリスの女性アーティストをゲストに迎えた楽曲。ヒップホップの要素とファンクが絶妙に絡み合い、ボーカル陣に負けないイダのうねるようなベースラインが、たまらないグルーヴを生み出しています。
Stopthistrain
レゲエのようなゆったりとしたリズムに乗せて、ハンナの心地よいボーカルが響き渡るナンバーです。曲の終盤、まるで列車が遠くへ走り去っていくようにフェードアウトしていく演出が、詩の世界観をさりげなく、そして美しく表現しています。
Anotherlove
アリス・スミスが2013年に発表した楽曲のカヴァーで、プリンスが新たな歌詞を追加しています。オリジナルとは打って変わり、プリンスのむせび泣くようなギターが炸裂する、情熱的でスケールの大きなロッカ・バラードへと劇的な進化を遂げています。
Tictactoe
日本でいう「三目並べ」を意味するタイトルを持つ、浮遊感あふれる美しいバラード。ロンドンのスタジオで録音され、コクトー・ツインズの音楽からインスピレーションを受けたという、夢心地なハーモニーが聴く者を優しく包み込みます。
Marz
2分に満たない短い収録時間の中に、人種問題や音楽業界での葛藤といった濃密なテーマを詰め込んだ、疾走感あふれるパンク・ロック。あっという間に駆け抜けるサウンドの中に、強烈なメッセージとエネルギーが凝縮されています。
Funknroll
アルバムの最後を飾るのは、その名の通りファンクとロックを謳歌する最高にハッピーな1曲。同時リリースの『ART OFFICIAL AGE』にはエレクトロなリミックス版が収録されており、生演奏の熱気が詰まった本作との違いを楽しむことができる最高のフィナーレです。
セールスなど
ワシントンポスト紙のインタビューで「僕は年寄りに構っている暇はないんだ。若い人たちと仕事がしたいんだ」「これからは、このバンドの遺産を築いていく時代なんだ」と語った通り、若い才能と共に作り上げた本作は、全米ビルボードのトップ・ロック・アルバム・チャートで見事1位を獲得。総合チャートでも8位にランクインしました。
ヨーロッパや日本でもトップ10入りを果たすなど世界中で大きな反響を呼び、プリンスの健在ぶりと、サードアイガールという新たなバンドの圧倒的なポテンシャルを広く証明する結果となりました。
トリビア
シンデレラ・ガールの誕生
ギターのダナ・グランティスは、プリンスが女性ギタリストを探していた際、YouTubeの動画をきっかけに見出されました。「ペイズリー・パークでジャムをしない?」というメールからオーディションに参加し、見事にその座を射止めました。
異例のレコーディング
「Boytrouble」に参加したリゾとソフィア・エリスは、スタジオに呼ばれてわずか3時間でラップ部分の作詞と録音を完了させました。その間プリンスは姿を見せず、別室から電話越しに音を聴いて指示を出していたというユニークなエピソードが残っています。
夢心地のセッション
「Tictactoe」は、コクトー・ツインズの曲が流れるパーティで一晩過ごしたあとに、ロンドンのブライアン・フェリー所有のスタジオで録音されました。プリンスは彼らについて「歌詞はよく分からないけど、ハーモニーに夢心地にさせられる」と語っています。
タイトル曲のルーツ
タイトル・トラックの「Plectrumelectrum」は、もともとダナ・グランティスが加入前に自身のバンドで発表していた「Elektra」という曲がベースになっています。
